リブ・フォーエバー
1990年代ブリットポップの隆盛と衰退を検証したドキュメンタリー「リブ・フォーエバー」(7月3日公開)を観て思ったこと。
ブリットポップの発端は1990年に、ストーン・ローゼズが十万人以上の動員を集めた、スパイク・アイランドでのコンサート。その後マンチェ・ブームが去り、ニルヴァーナ等の米オルタナ勢が台頭するが、その反動としてイギリスならではの生活や習慣を歌にしたアーティストが出現し、ブリットポップのブームを作り出す。ブラーとオアシスが、その先鋒である。英国人の若い層は、スパイクアイランドでの結束よろしく、これらのバンドを熱烈に支持。これに目をつけた労働党が、ポップ・スターとの親交をピーアールして保守党から政権を奪ったことで、ブリットポップは、その役目を終えて急速にしぼんでいく。映画は、ここまでの流れをわかりやすく紹介しているので、ブリットポップに親しみがない人でも、ひとつの社会現象を追ったドキュメンタリーとして楽しめると思う。
インタビューはブラーのデーモン・アルバーンやオアシスのギャラガー兄弟、exパルプのジャーヴィス・コッカーが登場しているが、そのなかで“おっ!”と思ったのはスリーパーのルイーズ・ウェナー。この辺のバンドは、来日公演となると当時、ほとんど観に行ってたけれど、スリーパーのクアトロでの公演も、イキが良くて、なかなかの好印象だったのを覚えている。残念ながら1997年のサードアルバム『PLEASE TO MEET YOU』を発表後、スリーパーは解散してしまうのだが、彼らの『Delicious』や『Romeo Me』などの良質のポップソングは今でもお気に入り。そのルイーズ、“ロビー・ウィリアムズが売れたとき、オアシスは終わった”など言いたい放題。この毒舌のエネルギーを新たなバンド活動に向けてほしいなあ、と。ブラーもオアシスも、いまだ現役バリバリなんだし、このまま音楽的な才能を絶やすのはもったいない気がする。
楽曲的にはノスタルジーにするには早すぎる曲ばかり。ブラーもオアシスもレディオヘッドも、ギタポ系のクラブで頻繁に耳にするしなあ。ただ、興味深かったのは、アメリカン・オルタナ勢への反発として始まったブリットポップが政権交代で役目を終えたものの、ブレア首相の労働党内閣は、9.11以降、親米的な姿勢をとっていること。そういう意味では、今この映画を観ると、強烈な皮肉を感じ取ることができる。
写真はスリーパー1995年発表のファースト・アルバム『SMART』。劇中でフィーチャーされる彼らの代表曲『INBETWEENER』を収録しています。
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