ロンドン・コーリング!

gakus2004-06-14

と言っても、Clashとは何の関係もないフランス映画「好きと言えるまでの恋愛猶予」(7月下旬公開予定)の話。

 舞台は1960年代なかば過ぎのフランス。スウィンギングロンドンに憧れる男の子と、ちょっと影のある女の子が出会い、惹かれあうも、すれ違って、なかなか好きと言えない…という、よくあるタイプのストーリー。個人的には、この手の話は肌に合わないなあ…と思っていたのだが、けっこう観れたのは、男の子のスウィンギングロンドン熱に負うところが大きい。冒頭で、この少年の部屋の模様が写るが、そこにはトロックズのポスター、ザ・フーやアニマルズのレコードがあり、壁にはハーマンズ・ハーミッツのピンナップが貼られていたりと、当時全盛だったモッズ・カルチャーへの憧れは一目瞭然なのである。

 この気持ちは、とてもよくわかる。自分が高校生だったころはビルボードのヒットチャートにイギリスのバンドがガンガン食い込んでいた、いわゆる第2期ブリティッシュ・インベージョンの時期。次から次へと面白い音を送り出してくるイギリスのロックシーンが眩しかった。時代は違えど、ロックとファッションの最先端を行く街ロンドンは若人を惹きつけるのだな、としみじみ。もうひとつ、主人公の男の子が悪友とゴダールの映画を見て、“おまえには難し過ぎたかな”というところ。わざと無口を装ったりするキャラも含め、頭が良いと思われたい…という、この背伸び感覚も10代のリアルだよなあ、と。

 当然、音楽も英国産メインかと思いきや、これがそうでもない。アレサ・フランクリンオーティス・レディングウィルソン・ピケットなどのアトランティック・ソウルがメインとなるのは、当時のモッズがソウルを好んでいたことの表れなのだろう。なかでもヒロインの母が好きだった曲と劇中で説明される、エスター・フィリップスの絞りだすような歌声も鮮烈な「TRY ME」の使われ方は秀逸。初めて男の子がヒロインの部屋に通されたときのBGMとなり、またエンディングでもフィーチャーされているので、“愛のテーマ”的なあつかいと言えるだろう。

 ビート勢ではトロッグス、クリームはともかく、イージービーツやキングスメン等のイギリス以外のバンドが印象に残る。とりわけ、個人的に大好きなアメリカン・ガレージロックの最高峰(と、私は思ってます)シャドウズ・オブ・ナイト/SHADOWS OF KNIGHTの『GLORIA』がかかるダンスシーンは燃えた! デカい音で聴くと、気持ちいいんだ、これが。さらにクラブの乱闘シーンでは彼らの『LIGHT BULB BLUES』が、これまたデカデカと鳴り響き、もうほとんど無意味に興奮してしまう。というわけで、写真はこの2曲を収録した、かっちょ良すぎる大名盤『GLORIA』。


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