悲惨でおかしい英国紳士
「ピンク・パンサー」シリーズなどで知られる俳優、故ピーター・セラーズの人間像に迫る伝記ドラマ「ライフ・イズ・コメディ!/ピーター・セラーズの愛し方」(1月公開)は、なかなか面白い作品でした。『24』で今をときめいているスティーブン・ホプキンス監督の力作。
「五線譜のラブレター」や「ネバーランド」など、このところ伝記モノが多いが、これらと本作の共通点は、クリエイティブな仕事をしているアーティストがいかに子供っぽいか、ということを見つめている点。それゆえ、結婚生活も波乱アリアリだが、「ライフ・イズ・コメディ!」は、そのなかでももっとも悲惨なものといえる。悲惨というのは、あくまで結婚・恋愛面でのことで、喜劇役者としての活躍は、また別の話。
恋多き男セラーズが、“君たちのことを愛しているが、ソフィア・ローレンのことをもっと愛しているんだよ"と子供たちに真顔で告白し、妻を呆れさせるのも凄いが、離婚後もズルズルと前妻に母性を求めてくるあたりは、本当に子供っぽい。
そんなダメ男の物語を彩るのは「何かいいことないか子猫ちゃん」の主題歌など、セラーズ作品縁のナンバーはもちろん、セラーズの生きた60〜70年代のブリティッシュロックも使われている。なぜか、ここでもクラッシュ/THE CLASH『SHOULD I STAY OR SHOULD I GO』が起用されている。映画でこの曲を聴いたのは今年だけで3度目。
エンディングはキンクス/KINKSの『WELL RESPECTED MAN』。尊敬すべきなのか、しないほうがいいのかよくわからないセラーズの人生に、レイ・デイビスのひょうひょうとした歌声&アレンジが、皮肉っぽい雰囲気と併せて、見事にはまっている。
ジャケはKINKS、1965年のアルバム『KINDA KINKS』。現行のこのCDには、当時はEPで発表された『WELL RESPECTED MAN』がボーナストラックとして収録されています。
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