死ぬまでジャンキー

gakus2004-12-15

 昨日に続いて、「ライフ・イズ・コメディ!/ピーター・セラーズの愛し方」について。

 二人目の妻ブリット・エクランドに逃げられた本作の主人公にして実在の俳優ピーター・セラーズの姿にデビッド・ボウイの『SPACE ODDITY』が重なる。この歌の主人公メイジャー・トムが宇宙で孤独となったように、セラーズもまたひとりぼっちになる。セラーズが子供っぽい人であったのは、昨日記したとおり。占いを信じたあげくの二度目の結婚も、気まぐれや暴力で破綻してしまうのである。

 後年デビッド・ボウイは、『ASHES TO ASHES』で、“メイジャー・トムはただのジャンキーだった"と歌い、過去と決別した。そこには未熟な過去のイメージからの脱却が少なからず表現されていた。変容の貴公子ボウイは、この時点で確実に成長していたのだ。それを思うと、セラーズが死ぬまで子供であった…という映画の内容は、なんとも対照的。いつまでも宇宙をトリップしていたいタイプの人だったのだろう。

 念のために断っておくと、この映画は決してセラーズの幼さを裁こうとしているわけではない。セラーズを物語の語り手としても登場させ、客観的な視点をあたえているのは、“こんな面白い人がいました”ということを伝えるためだろう。教訓を得るのも、共感するのも観る側に委ねられる。

 ジャケはデビッド・ボウイ、1969年のアルバム『SPACE ODITTY』。現行のCDは新ジャケットになっていますが、危なげな顔つきの、こちらの旧ジャケの方が好きだな。