線を消すために
アジア発のロック・ドキュメンタリー「シャウト・オブ・アジア」(4月23日公開)を観る。
韓国の人気アーティスト、カン・サネがアジア各国をまわり、それぞれの国のミュージシャンと交流。映画はこの旅を追いかけながら、国境という意識について考えさせる、芯のある作り。カン・サネの両親は北朝鮮の生まれで、故郷に帰れない悲しみを強く抱いている。この映画を撮った監督の玄正行は在日二世で、そういう点でも国境という意識は強い。そんな視点の足場の確かさも手伝い、音楽は国境を越えるという部分が、ここでは明確に伝わってくる。一本の線に区切られたあっちとこっちの隔たりが、どれほど大きいものか。映画は真摯にそれをとらえており、“線”が引き起こした傷あとに、時に泣かされそうにもなる。
お涙頂戴というわけではなく、むしろ各国のアーティストたちの格闘する姿勢にグッときたという部分が大きい。歌わなくてはいけない歌があるから、歌い続ける。その姿勢を保ち続けることは、人間的に強くなくちゃできないよなあ、と。隣の家の人との交流さえ面倒くさがる自分のような人間は、まず身近なところから“線”を消していかないと。
映画の中で、カン・サネはまず日本に行き、そこで忌野清志郎と会う。武道館公演の模様が映し出され、そこで清志郎が歌っているのが『憧れの北朝鮮』というナンバー。そういう曲があることは噂では聞いていたが、“♪北朝鮮にはタダで連れて行ってくれる、海辺にいれば拉致してくれる〜”といった感じの風刺の効いたナンバーで、聴いていて笑ってしまったが、それでもマジメなメッセージがこもった曲だった。『COVERS』をリリースしたころのRCサクセション時代の姿勢と変わらない、清志郎の姿勢。これも真摯なり、と感じる。
ジャケは1995年、清志郎がタイマーズを率いて発表した『復活!!THE TIMERS』。タイマーズに関しては、かなりラジカルで攻撃的だった。そういえば、ここ数年清志郎の新譜を買っていない。この映画を観て久々に聴いてみたいな、と思った。
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