今年のベストかも

gakus2005-05-13

 日ごろ流血と汗とお色気が入り混じった悪趣味な映画にばかり執心している自分でも、年に1、2本は心から泣ける映画と出会ったりする。今日観た「Dear フランキー」が、まさにそうでした。

 舞台はスコットランド北部の港町。聴覚障害によって言葉を話せない少年フランキーは母親、祖母と暮らしている。彼の唯一の楽しみは、船乗りとして世界を回っている父との文通。しかし、父からの手紙は、実はすべて息子を不憫に思った母が書いていた。そんなある日、手紙に記されていた、父の乗った船が偶然にもフランキーの街に寄港することに。父と会うことを楽しみにしているフランキーのために、母親は父親を演じてくれる男性を探すことに…。

 フランキーは父の愛を渇望し、その母親はフランキーが父宛に書く手紙に息子の“声"を求める。いうなれば、幸福になるための足りない“何か”を探している人々の物語。障害で観客の同情を引くのは簡単だが、この映画はそんな媚びたマネはしない。悲劇ともとれる出来事にクヨクヨしない、逞しさがそこにある。悲しいからではなく、そんな人間の凛とした強さに泣けました。

 それともかく、音楽話。冒頭の引越しのシーンで流れるのが、イギリスの新進シンガーソングライター、クラークスヴィルの『EVERYONE WILL HAVE THEIR DAY』。バラード調のこのナンバーで、まず心を掴まれたが、“誰にでも輝ける時がある”という歌詞は、最後まで映画を観てから振り返ると、登場人物のポジティブな精神を祝福しているようで、印象も強くなる。

 フランキーとニセ父親との交流シーンでは他にフォーク風の温かみのあるナンバーが2曲ほどフィーチャーされている。おそらくひとつはダミアン・ライスの曲。

 ジャケはクラークスヴィル、2003年リリースのファースト・アルバム『THE HALF CHAPTER』。『EVERYONE WIIL HAVE THEIR DAY』もいい曲だが、シングルになった『SECRET FILE』も名曲。CLARKESVILLEこと、マイケル・クラークさんはその後、音沙汰が途絶えていたが、現在はTHE DECIPHERSというバンドを結成し、活動を続けている模様。