隠居暮らしの007

gakus2005-09-26

 「ダイヤモンド・イン・パラダイス」(2006年公開)はジェームズ・ボンド俳優ピアース・ブロスナンが、007シリーズを降板して主演した犯罪アクション。英国紳士たる粋でクールな彼の魅力が活きた、ライトな一編。

 難仕事を最後に引退した泥棒(ピアース)が、恋人(サルマ・ハエック。エッチでよろしい)とバハマで優雅な引退生活をおくるも、秘宝のダイヤを展示した豪華客船が港に停泊したことから、スリルへの欲求がうずき出す。恋人の反対、宿敵であるFBI捜査官の挑発、地元ギャングとの取引などがからみ、そこで主人公がどう動くのかが、ドラマの主軸となる。とはいえアクションよりも、コメディ色が強く、小粋なジョークや絶妙のシチュエーションでクスリとさせる作り。ピアースは脚本を読んですぐに出演を決めたそうだが、スタイリッシュなヒーロー像は彼の初プロデュース作品「トーマス・クラウン・アフェア」に近い。こういうキャラが彼のお好みであるなら、何をされても死なないスーパーヒーロー的になりつつあったジェームズ・ボンドに嫌気が差したのも、納得がいく。

 音楽面で印象的だったのは、美女をはべらせたドン・チードルふんするギャングのボスが、ピアースにママス&パパスの音楽を勧めるシーン。“俺はママス&パパスのフリー・ラブの精神を実践している。ミッシェル・フィリップス(パパス&ママスのメンバー)だって、いろんな男とやってたんだ”と言うチードル。一言で言うと“俺はヤリチン”と言ってるわけです。ポカーンとして聞いていたピアースが帰りにカーオーディオで、チードルからもらったCDをかけてみるシーンのオトボケ感が妙におかしかった。

 車に閉じ込めた捜査官のカーステを遠隔操作し、嫌がらせのようにレッド・ホット・チリ・ヘッパーズ『LOVE ROLEERCOASTER』を大音量で聴かせるシーンもあり。この他は、レゲエ、スカ、ラテンなどの今風のテンポの早いダンス曲が全編にフィーチャーされ、トロピカル気分を盛り上げる。

 ジャケは、ピアースの車の中で鳴っていた『GO WHERE YOU WANNA GO』を収録したTHE MAMAS & THE PAPAS、1966年のアルバム『IF YOU CAN BELIEVE YOUR EYES AND EARS』。これは聴きながら、ピアースは“コイツらより先にジェームズ・ボンドはフリーセックスを実践していたぞ”と思っていたに違いない。