ある意味ゾンビ映画
「セレブレーション」のトーマス・ヴィンターベア監督、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー脚本、「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル主演のヨーロッパ人脈で撮られた「ディア・ウェンディ」(12月公開)は、なぜか舞台がアメリカの田舎町。炭鉱の町でビンテージ物の拳銃を手にしたことから、悲劇へと向かう少年の暴走が描かれます。
拳銃を初めて撃ったことで、ジェイミーは自分に自信を持つようになり、“炭鉱で働かなきゃ男じゃない"という街の風潮に初めて逆らえるようになる(なんか「リトル・ダンサー」みたいだな、こりゃ…)。意気揚々としたジェイミーが最初にするのはレコードに針を置き、窓から家の前の広場を眺めること。このレコードは、ジェイミーが好きな古いバンドと紹介されるゾンビーズ/THE ZOMBIESの『SHE'S NOT THERE』。以降ゾンビーズは何度も、この映画の中でフィーチャーされる。
“銃による平和主義"、すなわち“銃を持つことで自分に自信を持とう!”という考えを広めるため、ジェイミーは自分と同じように炭鉱で働くことを嫌がってる負け犬たちに声をかけ、ダンディーズなるビンテージ銃愛好会を作る。その結成時に『INDICATION』が賑やかに鳴り響く。またこの会は銃を恋人のように扱うことがルールで、彼本人は銃にウェンディと名づけ、予備の銃にエミリーという名をあたえるが、そこに絶妙のタイミングで『ROSES FOR EMILY』が流れる。また、しばらく銃を持ってなかった仲間のひとりが、初めて持った銃にウーマンと名づけるが、するとやはり『WOMAN』が流れてくる…という寸法だ。
悲劇のクライマックスでは、『THE WAY I FEEL INSIDE』のアカペラ部分が哀感を際立たせ、エンドクレジットはおなじみの『TIME OF THE SEASON』。後者は劇中で3〜4度は流れていたのでほとんどメインテーマ的な扱い。この映画はジェイミーがウェンディ宛に手紙を書き、これまで起きたことをを回想するという流れになっているが、その手紙の一節が“TIME OF THE SEASON"という言葉で締めくくられると、あのユッタリしたイントロが流れてきたりする。また、先述の曲にも2〜3度繰り返して使われているものがあり、まさにゾンビーズづくしでありました。
ジャケは1965年リリース、ゾンビーズの1STアルバム『BEING HERE』。『THE WAY I FEEL INSIDE』『SHE'S NOT THERE』『WOMAN』はこれで聴けます。
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