全身レコーディング・プロデューサー
「トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男」なるドキュメンタリーが4月に日本公開される。読んで字のごとしの内容で、デレク&ドミノスの名曲『いとしのレイラ』をはじめ、アトランティック・レコードの多くの名盤にレコーディング・プロデューサー、エンジニアとして関わったトム・ダウドの功績をたどった作品です。
キャリアの初期にはレイ・チャールズ(そういえば「Ray/レイ」にもダウドらしき人物がいたような。ちなみに本作ではアトランティックの大物プロデューサー、ジェリー・ウェクスラー本人も出てくる)やジョン・コルトレーン、60年代はオーティス・レディングやアレサ・フランクリンなどのサザンソウル、70年代にはクリームやレッド・ツェッペリンなどのUKロックからオールマン・ブラザースなどのサザンロックまで、ジャンルを超えて大活躍したダウド。しかし、エリック・クラプトンが“(当時は)裏方はどうでもよかった”と語るように、その業績は意外に認められていない。そこに光を当てたことに、この映画の意義がある。
当のダウドは“自分の仕事に満足している”と語る。とりわけ印象に残るのは『レイラ』の後半、ピアノが入ってくるインスト部分のクラプトンとデュアン・オールマンの、それぞれのギターの音をミキサー卓で調節して聴かせる場面。その後、リズムトラックなどさまざまな音を重ねて本来の『レイラ』に近づけていくうちに、本人はすっかり興奮して“初めてミックスするような気分だ”と、多種トラックを夢中で調節し始める。このシーンだけで、やりたいことをやり続けてきた者の幸福感をうかがい知ることができる。
貴重なフッテージも盛りだくさんで、アレサのレコーディング時のドキュメンタリー映像や、ブッカーT&MG’s のパフォーマンス(『GREEN ONION』!)、彼らをバックにしたオーティス・レディングの『I'VE BEEN LOVING YOU TOO LONG』のハイテンションの熱唱など、スゲーと思った映像多数。もちろん、ダウドが語るレコーディング裏話も面白く興味深かった。ルーファス・トーマスのヒット曲『WALKING THE DOG』誕生秘話とか。
ジャケは、オーティス・レディングとダウドの記念碑的な作品として劇中で紹介される1966年のアルバム『OTIS BLUE』。ガッタガッタ言ってる『I'VE BEEN LOVING YOU TOO LONG』はレコーディング・バージョンでも十分にシビレる。
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