ご覧の映像はイメージです

gakus2007-05-25

 またまた音楽ドキュメンタリーの話。『カート・コバーン/アバウト・ア・サン』(8月公開)は、カートのインタビューから、生い立ちや実像を探る一編。カートのバイオ本「病んだ魂」の著者マイケル・アゼラットが、執筆のために取り貯めたインダヒュー・テープの音声で構成されている。アゼラットはマスコミ嫌いだった生前のカートが信頼を置いていた、数少ないジャーナリストのひとり。そのせいか、インタビューのカートはやけに饒舌。“音楽をやるからにはスターになりたい”“有名になどなりたくない”などと、矛盾する内容のことも赤裸々に話しているのは面白い。いずれにしても、生前の“素”のカートの肉声が聞けるという点だけで、貴重ではある。

 が、映像がほとんどイメージであるというのが弱点で、ニルヴァーナのステージの映像でも出してくれればよかったものの、ギグ時のスチールや、カートが暮らしたアバディーンオリンピア、シアトルなどの街の風景がとらえられる程度で、ビジュアル的なインパクトは弱い。それと、ここでもニルヴァーナのナンバーは一曲も使われておらず、ボウイ「世界を売った男」やVASELINES「SON OF A GUN」などのファンにはなじみの深いカートの愛聴曲がフィーチャーされているだけというのも、ちょっと厳しいか。一応、コートニー・ラブはテープの公開を公認したというが、それ以上の素材を使わせなかったのはどういうわけか。そのコートニーのテープ中の声も聴けるのだが…。

 面白かったのは、図らずもテープに収められてしまった音楽で、“パンクは、ありきたりのロックより直接的に俺に語りかけてきた”と語る際のカートの声のバックで、BRUCE SPRINGSTEENの「BADLANDS」が鳴っていたこと。どこかのお店のBGMっぽいんだけど、見事な偶然というか演出というか…。

 ジャケはNIRVANAアメリカでのレーベルメイト、TEENAGE FANCLUB、1992年リリースのシングル『STAR SIGN』。シアトルの街並みが早送りで映し出されるシーンでドカーンと鳴っていた。