NOからYESへ

gakus2007-07-10

 The Clashのフロントマン、ジョー・ストラマーの生涯をたどったドキュメンタリー『LONDON CALLING/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』(9月公開)は、誕生から2002年の急逝までをたどったもので、なかなかグッとくる好編でした。

 ホームビデオの映像をまじえた幼少期、友人の証言を集めたスクワッター時代を経て、栄光と挫折のクラッシュ時代へ。元メンバーではミック・ジョーンズ、トッパー・ヒードンはインタビューに応えているが、ポール・シムノンは『VIVA JOE STRUMMER』に続いて今回も出演ナシ。その代わり、彼の元妻をインタビューに引っ張り出すという裏技で、ジョーが実は他のメンバーのガルーフレンドにも手を出していた…などという赤裸々な話が聞ける。それでも基本的には生真面目な人だから、間違ったことに対して“NO”というパンク的アティテュード、ファンに対する責任感、有名になったことで感じる居心地の悪さといった逸話はやっぱり胸に迫る。

 そして、やはり知りたいのはCLASH解散後、メスカレロス結成までの方。こちらはジム・ジャームッシュやサラ・ドライバー、コートニー・ラブといった、映画がらみの友人の証言がメインとなる。詳細は省くが、レコード会社との関係の悪化(ソロアルバム『EARTHQUAKE WEATHER』が手切れ金代わりに作られたとか)等で、もっともツラい時期だったという。ひとつを忘れられないエピソードを挙げると、米軍のイラク爆撃を伝えるニュースのBGMに「ROCK THE CASBAH」が使われたときのこと。“俺の曲が米軍の死のシンボルになるなんて"と、ジョーは泣いたという。

 その後のメスカレロス時代のポジティブな姿勢は『レッツ・ロック・アゲイン』に詳しいので、これも省くけれど、キャンプファイアを囲んで仲間と歌い、語り合う、ストラマーヴィルという運動を始めたことは、その表われだろう(この映画の様々なインタビューも焚き火を囲んで行なわれている)。クラッシュのころはヒッピーを毛嫌いしていたジョーが、このころには“俺はヒッピーになりたい"と言うに至った。これに代表されるように、“NO!"と叫ぶことから始まった音楽的姿勢が“YES"へと向かう流れに、この映画のストーリー性があり、だからこそグッときたのでありました。

 『NO FUTURE』でセックス・ピストルズのライブ・フッテージをズタズタにし、『グラストンベリー』でもライブ・フッテージはサラリと見せる程度にとどめたジュリアン・テンプルが監督なので、今回も音楽面での魅力はあまり期待できないが、ドキュメンタリーとしてのデキは丁寧で、悪くないと思う。あと、彼のステージを体験したスティーブ・ブシェミジョン・キューザックといった俳優や、プライマル・スクリームのボビーらのコメントが泣かせるのだが、それも見ていただくことにしましょう。

 ジャケは不遇期のジョーが手がけたアレックス・コックス監督作『WALKER』のサントラ盤。1987年リリース。この中から「OMOTEPE」が劇中で聴ける。