チョイ意地悪
大ヒット・ミュージカルを映画化した『ヘアスプレー』(10月公開)は全米での評判どおり、確かに面白かった。ミュージカル版の元ネタが奇才ジョン・ウォーターズによる同名映画であることは周知の通り。実は個人的に、このウォーターズ版が大好きなので、今回の映画を楽しんだ反面、ウォーターズ版のテイストが損なわれたことが気になったりもした。
1962年のボルチモアを舞台に、地方TV局のティーン向けダンス番組に憧れるオデブな女の子の奮闘を描いた物語。ヒロインはやがて幸運にもTV出演を果たすが、人種差別に異を唱えたことで論争の渦中に巻き込まれてしまう。ミュージカル版は見ていないのでわからないが、ウォーターズ版と比べると基本的には忠実なリメイク。しかし狂ったキャラがシェイプされたぶん、毒気が薄れた感は否めない。結果、人種差別に反対するテーマよりもはみだし者賛歌的な要素が強かったウォーターズ版に比べると、あらゆる差別に反対するという社会的なテーマが大きくなりすぎた。そこにささやかな不満を覚えてしまう。まあ、これは好みの問題かもしれませんが…。
しかし、今回の新作にも良い改変がある。とりわけ、クイーン・ラティファふんする女性歌手の愛娘の扱いはウォーターズ版の上をいっていると思う。
ジャケはSMOKEY ROBINSON & MIRACLESのアルバム『POCKET FULL OF MIRACLES』。1970年リリースのこのレコードが、なぜかラティアの経営するレコード店に置かれていた。こんな細かい点にツッコミを入れたくなるのは、やはりウォーターズ版より優れていることを認めたくない意地悪な気持ちゆえか。
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