インテリ注入

gakus2007-08-31

 サディスティック・ミカ・バンドの今年の再結成コンサートを中心に新作のレコーディング風景やインタビューをまじえたドキュメンタリー『sadistic mica band』(10月公開)を観る。

 実は再結成して新譜まで出していたなんて、恥ずかしながら知らなかったのだが、新譜のナンバーがエラく良い。これぞミカ・バンドといった感じで、1988年の再結成アルバム『天晴』よりもファンキーで、らしいのでは。新しくゲスト・ボーカリストに迎えられた木村カエラ(この人も名前こそ知っているが、どんな人か知りませんでした…)のパフォーマンスもはつらつとしていて魅力的でした。

 興味深いのはインタビューで、加藤和彦の包容力のあるリーダーシップ、高橋幸宏のナイーブさ、小原礼の竹を割ったような性格がよく現われていて、バンド内の役割分担が見えてくる。高中正義はなぜかインタビュー・フッテージはないけれど、“あの人は高中星の高中星人だから”(小原礼談)のひと言で納得してしまった。矢沢星の矢沢星人みたいなものですな。

 レコーディング風景の中で、“インテリこそロック”みたいなことがジョークのようにメンバー間で語られるのだが、確かにミカ・バンドは汗の匂いとは無縁。ファンキーなバンドなのに、このクールネスはいったい何なのだろう…と思っていると、どうやらこの部分は加藤和彦高橋幸宏が担っているのではないか…という空気が読めてくる。“他人と同じものはやりたくない"という高橋幸宏の発言は、それを顕著に表している。また、“トノバン(=加藤)は最高級を、幸宏は最先端を求めている”という小原礼の発言も頷ける。

 どちらかというと、汗チームに属している小原礼高中正義の方に個人的には、好感が持てるのだが、それでも4人そろって初めてあの音が出せるという事実は、やはり凄いと思う。

 ジャケは1975年リリース、ミカ・バンドの3rdアルバム『Hot Menu』。このアルバムからナンバーが映画からオミットされているのは、単純にここからやってなかったのか、それともメンバー・チェンジ後のアルバムだからか。でも『天晴』コンサートではやってたしな…。とにかく、ここに収録されている“マダマダサンバ”や“ファンキーmahjang"みたいなノーテンキな曲が個人的には好きだなあ。

サディスティック・ミカ・バンド [DVD]

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