iPodには入れておけ

gakus2007-12-27

 新作に関して更新するのは、今年はコレで最後かな…というわけで、ウェス・アンダーソンの新作『ダージリン急行』(3月公開)の話。

 不仲だった3兄弟が、長男(オーウェン・ウィルソン)の呼びかけで1年ぶりに再会し、インド横断の列車旅行に出る。この旅で彼らは絆を取り戻す…はずだったが、長男の目には次男(エイドリアン・ブロディ)も三男(ジェイソン・シュワルツマン)も自分勝手に見えて、結局はギスギスしてしまう。そんな珍道中を繰り広げるうちに、3人は予期せぬ事件に遭遇し……。正直なところ、見終わった直後は、アンダーソンの以前の作品ほどはピンと来なかったんだけど、後から思い返すほどボディブローのようにジワジワと効いてきた。たぶんスカシた作りに違和感を覚えたのかもしれないが、結局この3兄弟のダメっぷりは、やはり自分にも思い当たるフシがあるんだよね…。

 9月24日のエントリーでふれたとおり、THE KINKSのナンバー3曲はしっかりかかる。冒頭、電車に走って飛び乗るブロディの姿がスローモーションとなり、“THIS TIME TOMORROW”が聞こえてくると、それだけでなんだか切なくなる。“STRANGERS"は3人がバスから降りて、やはりスローモーションになるシーンでのフィーチャー。そしてやはりスローモーションの3兄弟が電車に乗るシーンで“POWERMAN”が。他にROLLING STONES“PLAY WITH FIRE"が、3兄弟と母親の再会のシーンを印象的に彩る。

 が、実はこの映画の音楽的な主役は他にある。PETER SARSTEDTというイギリスのシンガーソングライターの、一発屋と呼ばれてもしょうがないほどのヒット曲となった“Where Do You Go To (My Lovely)”がその曲。ジェイソンのiPodに入っており、彼は女性と行為に及ぶ時にロマンチックなムードを高めるべくこれをかけ、エンドクレジットでもこれが流れる。それだけではなく、本編前に上映される姉妹編の短編『ホテル・シュヴァリエ』(ナタリー・ポートマンのヌードが話題のアレ)でも使われており、メンテーマといってよい扱い。とにかく、一聴しただけで切なさが高まるナイスなセレクト。こんな往年の忘れられたナンバーを引っ張り出してくるのだから、アンダーソンのUKロック・オタクぶりは筋金入り。

 ジャケはこのナンバーを収めた、PETER SARSTEFDTのベスト盤。ちなみにピーターさんはインド生まれでダージリンに住んでいたこともあるとか。