old punks

gakus2008-09-24

 米マサチューセッツ州の小さな町に拠点を置いて活動する”ヤング@ハート”は、メンバーの平均年齢が80歳という高齢者合唱団。ご老体とはいえ侮ってはいけない。噂が噂を呼び、今や国境を越えてツアーを行なっているのです。この合唱団にスポットを当てたドキュメンタリー『ヤング@ハート』(11月公開)のお話。

 映画はメンバー各々の生活や境遇を紹介しながら、6週間後に控えた地元での恒例のコンサートに向けて、猛特訓を積む爺さん・婆さんたちの奮闘をとらえている。面白いのはレパートリーで、ボブ・ディランやジミヘン、デビッド・ボウイらのナンバーの他、クラッシュやラモーンズトーキング・ヘッズといったパンク勢の曲もある。もっとも選曲自体は54歳の指揮者兼主催者がやっているのだが、じいじもばあばも元気いっぱいで歌う、歌う。公演に向けて、新たにマスターしようとする曲はソニック・ユース"SCHIZOPHRENIA"やコールドプレイの曲だったりする。

 目からウロコだったのは、おなじみのナンバーでも歌う人が違うと曲の持つ意味が違ってくるということ。ジョーイ・ラモーンが"I Wanna be Sedeced"と歌うのと老人たちがこう歌うのでは、まったく違う意味になる。ミック・ジョーンズが格好よくがなりたてる"Should I Stay or Should I Go?"も、老人たちの歌で聞くと不謹慎なんだけど、つい吹き出してしまう。

 とにかく、そんなユーモアを抱えて生きているからか皆さんお達者で、生きることに対して、とてもポジティブ。象徴的なのが刑務所の慰問コンサートのシーンで、始めはニヤニヤしながら聴いている囚人たちも、最後の方では涙ぐみ。"こんなに感動したコンサートは初めてだ!”と老人たちをハグする。

 公演までの6週間の間に不幸にも世を去ってしまうメンバーもいるが、この映画ではそれがドラマチックに機能する。とにかく笑って泣ける映画でありました。

 ジャケは"SCHIZOPHRENIA"収録、SONIC YOUTH、1987年のアルバム『SISTER』。