男子校ノリ

gakus2009-07-16

 10月に日本公開されるイギリス映画『パイレーツ・ロック』は個人的にモロ、ツボ。面白い!

 舞台は1966年、ロンドンがもっともスウィンギンしていたポピュラー・ミュージックの全盛期。BBCは一日に45分しか流行歌を放送してはいけないという規制があった。代わってユース・カルチャーを担っていたのは船の上から電波を発していた海賊ラジオ局。モータウンをイギリスに流行させたことには、これらの局の存在が大きくモノを言った。本作は、そんな世相を背景にしたお話。

 イギリスの若者たちを熱狂させている海賊放送局。その船には個性的なDJたちが顔をそろえ、一日中ロックンロールを流し続けている。しかし、国内に不純な音楽を垂れ流す局は政府のおエラ方にはジャマな存在。かくして、この連中は電波規制法案をブチ上げ、海賊放送局の根絶に乗り出す。しかしロックを愛し、自由を愛するDJたちがこれに屈するはずがないのだ!

 ますキャストが素晴らしい。アメリカからやってきた人気DJ役にフィリップ・シーモア・ホフマン、そのライバルとなるキザなカリスマDJにリス・エヴァンス、デブだけど女の子にモテるDJには『ホット・ファズ』のニック・フロストという布陣。さらに『パイレーツ・オブ・カリビアン』ではタコ面船長だったビル・ナイが、ちゃんとした船長にして局のオーナーにふんし、細い体をクネらせてダンスまで見せてくれる。

 『ノッティングヒルの恋人』や『ブリジット・ジョーンズの日記』の脚本で名を上げ、『ラブ・アクチュアリー』で監督デビューを果たしたワーキング・タイトル御用達のリチャード・カーティスが描く物語は、実際にその時代を体験した者のなせる技か、とても生き生きしている。船に乗っているのは基本的に野郎だけで、炊事係の唯一の女性はレズビアン。時々ファンの女子たちがやってくれば乱交の場と化すが、基本的にはアホ話もエロ話も自由にできる場所。ヒマつぶしにクイズ大会をしたり、告白ゲームをしたり。失恋した者の傍には、何も言わず言葉もなく慰めてくれるヤツもいる。プライドを賭けた対決もある。もう完全な男子校ノリ。振り返ると、笑えたり泣けたりするシーンがたくさんあるのは、このグルーヴのおかげかもしれない。

 ロックがアツい時代の話だから当然、音楽面でも語りたいことは多くなる。ちょっと長くなったので、それについては次回のエントリーにて。ジャケはDUFFY、昨年リリースのアルバム『ROCKFERRY』。“今”のアーティストであるこの人のジャケをのっけたのは、エンドクレジットでかかる”STAY WITH ME”がこの人のパフォーマンスによるものだから。ダスティ・スプリングフィールドペトゥラ・クラークを引き合いに出して語られることの多いダフィーだから、本作のピースとしてもハマらないはずはありません。

 トレーラーもイイ雰囲気↓