ママもパパも本当に大丈夫!?
『蝋人形の館』のハウメ・コジェ=セラ監督が、再びダーク・キャッスル・エンタテインメントの元で手がけたスリラー『エスター』(10月公開)は、『オーメン』の流れを組む、いわゆる”恐るべき子供”モノ。しかし実はそれほど単純でないことが、見ていくうちに判ってくる。
死産の悲しみを埋めるべく、とある夫婦が孤児院から迎えた養子、9歳の少女エスター。この家にはすでに2人の子供がおり、長男は新しい妹となるこの少女を快く思っていない。一方、エスターを姉として迎える耳の不自由な幼い娘は彼女になつく。ロシア系移民で、絵を描くことを趣味とする、理知的で感性豊かなエスター。しかし、彼女はジワジワと悪意をむき出しにして一家の幸福を破壊する。エスターの目的は、はたして何か?
あどけない少女が凶行を繰り返すのは確かにショッキングだが、それを支える心理ドラマ面の面白さにも注目したい。物語が進むうちに夫婦間の葛藤が浮き彫りになり、エスターはそんな脆弱の関係を鋭く突いて家庭を崩壊に導く。末娘の耳が不自由という設定も効いていて、彼女を利用して凶行を重ねるエスターの知能犯ぶりが際立つ。よく練り込まれた、恐ろしいお話です。
エスターを容姿に迎えた日、長男はギターを弾くTVゲーム(固有名詞があるんだろうけど、ゲームには疎いので…)をプレイしているのたが、そこで流れている課題曲がチープ・トリック”SURRENDER"。”ママもパパも大丈夫。でも、僕には奇異にみえることもある。降参した方がいいけれと、自分を見失ったりしないよ”という歌詞は、やがて皮肉にもとれるし、エスターの内面を言い表しているようにも聞こえる。すべてはこの時点で予告されていたのかも。そういう意味でも、よくできたスリラー。
ジャケは、この曲を収めたCHEAP TRICKのベスト盤『THE ESSENTIAL』。
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