上空一千万マイル

gakus2010-01-18

 ゴールデングローブ賞は『アバター』に持っていかれたものの、アカデミー賞では依然、本命視されている『マイレージ、マイライフ』(3月公開)。『JUNO/ジュノ』でオスカー候補となったジェイソン・ライトマン監督が、ジョージ・クルーニーを主演に迎えて撮り上げたヒューマンドラマ。

 クルーニーふんする主人公ライアンは、企業に代わってリストラを宣告をするエージェントで、全米中を忙しく飛び回っている。生き甲斐はマイレージを貯めることで”マイルにならない金は一銭も払いたくない”とのたまい、貯め続けたマイルは1000万! 自宅よりも空港や飛行機の中が好きで、結婚して家庭を持つなど考えもしない。ところが、会社がネットチャットによるリストラ通告システムを持ち出し、出張の廃止しようとしたことから、ライアンのマイレージ生活は窮地に追いやられる。彼はこの制度に反対したあげく、システムの発案者である新人女性社員を連れ、その教育を兼ねてともに出張に回ることになり…。

 物語が描くのは、お金やステイタスでは獲得できない人生の充足感についての考察で、どん欲なエクゼクティブ階級への風刺のようにも思える。とはいえジョージ・クルーニーがそれを演じると、それほどイヤミにならず、スルッとドラマに入っていけるのがイイ。主演男優賞候補の呼び声も納得だ。出張先でのアバンチュールの相手である似た境遇のキャリアウーマンにふんしたヴェラ・ファーミガ(『エスター』での良い仕事が忘れられません)もいいが、ライアンの部下を演じたアンナ・ケンドリックも好演を見せ、このふたりも助演女優賞に絡んできそうな気配。ケンドリックはカラオケでシンディ・ローパーの"TIME AFTER TIME"を歌って見せたりもする。

 機上から大地を見下ろすオープニングで響くのは、ウディ・ガスリーの有名なフォークソング"THIS LAND IS YOUR LAND"のブルース・カバーで、SHARON JONESがソウルフルな歌声を聴かせる。アメリカはあなたの地であり、私の地”というポジティブな詞も、ブルージーなアレンジのせいか皮肉交じりに聴こええてくるのが妙味。

 ジャケは2005年リリース、この曲を収めたアルバム『NATURALLY』。それにしてもこのアレンジ、21世紀の曲とは思えないほどオールドスタイルで渋みがある。

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