21世紀の兄弟仁義

gakus2010-03-22

 ひと月ぶりの更新。アカデミー賞ではスルーされたが全米の映画賞ではソコソコ評判となっていた、ジム・シェリダンの新作『マイ・ブラザー』(6月公開)のお話を。デンマーク映画ある愛の風景』のハリウッド・リメイクです。

 二人の幼い娘と暮らす主婦(ナタリー・ポートマン)の元にアフガンから届いた、夫(トビー・マグワイア)の突然の訃報。哀しみに暮れる彼女を支えたのは、夫の弟で前科のある問題児(ジェイク・ギレンホール)だった。二人は次第に心惹かれてゆくが、そんな折り、夫が実は敵の捕虜となり生きていたことが判明。しかし、帰還した彼は過酷な捕虜生活によって人格が荒んでいた…。シェリダン監督らしい丹念な作で、ドラマ的には味わい深いものがある。良き夫からパラノイアに変貌するトビーの変身ぶりも凄い。ジェイクふんする弟がカタギになってゆくのと対照的な壊れ方。そこに絡んでくる愛憎がドラマの肝。ナタポーも頑張っているが、見た目に幼い点がシングルマザーとしての説得力に欠けるか。

 エンドクレジットに流れる、U2のボノらよるオリジナル曲”WINTER”がとってもイイ!。”夏はもう歌わない”というフレーズは、幸せな頃には二度と戻れないことの象徴。これは音源化希望。

 劇中ではまた、U2の”BAD”がオーディオから流れてきて、ジェイクが”10代の頃よく聴いた曲”と語る。これもジェイクのキャラを物語る上で重要な曲で、不良の10代、犯罪者の20代を過ごしてきたいい加減なヤツだが、心の底ではどこかにたどり着きたかったことがわかる。意外にイイヤツだったのだなあ、と。

 ジャケはこの曲のライブバージョンを収めた『WIDE AWAKE AMERICA』、1985年リリース。ジム・シェリダンは昔からボノとつながりがあったけれど、同郷の絆が今も保たれていたことがファンとしては嬉しかったりする。