こんなシュールなところで会えるとは

gakus2010-07-09

 『ダークナイト』のクリストファー・ノーランレオナルド・ディカプリオ渡辺謙マリオン・コティヤールジョセフ・ゴードン=レヴィットエレン・ペイジらを配して放つSFスリラー『インセプション』(7月公開)。この映画、アメリカでは異常に評価が高く、確かに面白いのだが、もし『ダークナイト』級…とはいわないまでも、それに迫るヒットを飛ばしたりしたら、快挙と呼んでいいと思う。

 ディカプリオふんする主人公は、他人の”夢”の中に入りこみ、機密を盗み出す”エクストラクト”という技術のプロ。とある理由から故国アメリカに帰れず、最愛の子供たちに会うこともできない彼は、それを可能にしてやるという日本人実業家(渡辺謙)からの依頼で、困難な仕事を引き受ける。それは夢の中から情報を奪うのではなく、逆にニセの情報を植え付ける”インセプション”と呼ばれる術。チームを編成した彼は綿密な準備をして、この仕事に着手するが…。

 以上はストーリーの基本ラインなんだけど、この辺は劇中できちんと説明されるワケではない。したがって、ストーリーを能動的に汲みとる努力が見る側に必要になってくる。今見ている映像は現実のシーンなのか、それとも夢のシーンなのか? その夢にもいくつかの階層があって、それは何段階目の夢で、誰の夢なのか? それを考えることを観客に要求する映画なので、椅子にノンビリともたれて”楽しませてもらおう”という姿勢では、すぐにワケがわからなくなるだろう。ディカプリオの夢に現われては仕事を妨害する亡き妻(マリオン・コティヤール)との絡みや、夢の中で動く際のルール、”設計士””偽造師””調合士”などのチームの役割分担も把握する必要がある。

 難解で、濃密な2時間30分。うかつに近づくことはお勧めしないけれど、例えばキューリックの映画に意欲的に映画と向き合えるような映画ファンには確実に歯応えをあたえてくれる。つまりは観客を選ぶカルトな性質の作品なんだけど、それがハリウッドのメジャー・スタジオで作られてしまうのはある意味、凄い。全米で大ヒットしたら快挙と言ったのは、つまりそういうこと。

 ここまでは客観的な説明だが、個人的には大いにハマる映画で、シナプスが配線し直された感覚とでも言うか、夢だから可能なスペクタクルを含めてエキサイトできる映画だった。『マトリックス・リローデッド』(2作目の方だよ、3作目じゃなくて)を見た時の、”そうきたか、じゃあ挑んでやろうじゃねえか!”的な征服意欲を、妙にかきたてられる。幸い、『マトリックス』と違って続きはなさそうだし(苦笑)、あと2回は見ておきたいぞ。

 で、音楽談。夢の中からチームの面々が抜け出す際に、合図として音楽を流すのだが、それがエディット・ピアフの曲なので、マリオン・コティヤールと不思議に重なってしまう…なんて話はとりあえず置いておく。本作ではハンス・ジマーが音楽を手がけていて、幻想的かつ緊迫感のあるスコアを聴かせてくれる。そんな中、結末近くの空港のシーンで、いきなりメロディアスなロック風ギターをフィーチャーした曲が流れてきて、”これは既製曲か?”と一瞬思ってしまうのだが、歌もないしジマーのスコアと言われれば、まあ納得のいく曲。で、エンドクレジットを見ていてオッ!と思ったのが、ギタリストとしてジョニー・マーの名前がクレジットされていたこと。これって、あのジョニー・マーだよな?と気になり、家に帰ってマーのオフィシャル・サイトを見てみたら、やはりそうでした。昨秋のTHE CRIBS来日公演で、その姿を久々に見たけれど、バンド活動の一方でこんなことまでやっていたとは。

 ジャケは、そのクリブス、昨年リリースされたJOHNNY MARR加入後の最初のアルバム『IGNORE THE IGNORANT』。傑作!

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