時間に抗う

gakus2010-08-11

 本日も刑事モノ。ただし、こちらはグッとシリアスな『ブルックリンズ・ファイネスト(原題)』(10月公開)。『トレーニング・デイ』のアントワン・フークア監督による社会派寄りの硬派ドラマです。

 主要登場人物は3人で、ひとりは家族のために新しい家を買ってやりたいが、薄給でどうにもならない麻薬捜査官(イーサン・ホーク)。敬虔な彼は善悪の狭間で苦悩しつつ、捜査時に押収するであろう大金の着服を画策する。二人目は麻薬組織に潜入している刑事(ドン・チードル)。この任務が成功すれば出世するという約束も実現せず、ドップリと犯罪に浸かるハメになった彼は組織の大物(ウェズリー・スナイプス)との固い友情を築く。そして3人目は退職間近の警官(リチャード・ギア)。余計なことに首を突っ込まず事なかれで仕事をしてきた彼は、残る7日間も平穏に過ごしたいと思っている。この3者の人生が交錯し、物語はスリルを増して意外な結末へと向かう。

 ギアふんする警官が心を許す相手は、旧知の娼婦だけ。彼女はギアに退職祝いに腕時計をプレゼントするが、その裏側にカルチャー・クラブ“TIME(CLOCK OF THE HEART)”のサビの部分の詞を刻む。すなわち“時間は待たない”ということ。これは映画のテーマのひとつになっていて興味深い。主人公格の3人誰もが、いろんな意味で時間と格闘している点を踏まえると、なおさらだ。

 ギャングの側にも、大筋にはからまない、なんてことのない逸話ではあるが、ひとつ印象的なエピソードが。麻薬の売人たちが部屋にこもってビデオゲームをやっているのを見て、その元締めらしき男が“ビデオゲームのおかげで、街からストリート・ギャングが消えた、お前らはもうストリートにいない”と嘆くシーン。街はこうやって寂れてゆくものなのか、と、ゲームやらネットやらの引きこもり系エンタメの存在について、つい考えてしまった。ゲームをやっている最中にも、時間は当たり前のように経過してゆくものだ。

 最後にちょこっと起用楽曲の話。ギアが娼婦とセックスするシーンではジェファーソン・エアプレインの“WHITE RABBIT”、イーサン・ホークが仲間とポーカーをしているシーンではディープ・パープル”HUSH”が聴こえてくる、そんな60年代セレクト。ギャングの部屋で鳴ってるラップについては、まったく知識がないのでわからず。

 ジャケはCULTURE CLUB『TIME』の12インチ・シングル盤、1982年リリース。この頃が、ボーイ・ジョージの美しさのピークだったのでは?

追記 邦題『クロッシング

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