充満する男汁
先週末アメリカで公開され、堂々のナンバーワンヒットとなった『エクスペンダブルズ』(10月公開)。シルベスター・スタローンの号令の元、ドルフ・ラングレンやミッキー・ローク等のオールドスクール勢からジェイソン・ステイサム、ジェット・リーらの現役組までアクション俳優が結集したのはご存じのとおり。お話にはもうワンパンチ欲しいところだが、じゅるじゅるあふれる男汁は吸引力抜群で、見ていて嬉しくなってくる。こういう映画、最近なかったもんなあ。
高額の報酬と引き換えに困難なミッションをこなす傭兵集団“エクスペンダブルズ(=使い捨て、消耗品)”。リーダーのスタローンと、その片腕ステイサムは中米の独裁者を打倒の依頼を受け、下調べのために飛んだ現地で反政府運動の闘士である女性と出会う。帰国後、任務が困難と判断し、依頼を断ったスタローン。しかしエクスペンタブルズの元メンバー、ロークのグッとくる言葉に背中を押され、件の女性を救うために単身乗り込むことを決意。これに、友情に厚いエクスペンタブルズの面々も同調し、中米某国は壮絶な戦場と化す!
自分でまいた種を刈り取る使命感が先立っていた『ロッキー・ザ・ファイナル』『ランボー/最後の戦場』に比べると、『エクスペンダブルズ』のスタローンはずっと自由な感じ。ナルシスティックに映らないでもないが、それでもスタローン全盛期の俺様ぶりが多少なりとも戻って来ているのがイイ。他のキャストもあたえられた役回りを楽しんでいるようで、それぞれキャラが立っている。スタローンを立てつつライバル心を剥き出しにするステイサムの反骨心、二言目には“もっと金をくれ”と訴えるも、それも納得がいくリーの肉弾アクション、ドラマチックなキャラをあたえられたラングレンの微笑ましい不死身っぷり、そして女好きのクセに影のあるロークの泣き節。悪役のエリック・ロバーツも久々に本領発揮で水を得た魚のようだ。バイクにタトゥー、ナイフ、キツい酒といった野郎アイテムに事欠かず。もちろん、アノ人とアノ人の特別出演も見どころ。
こんなヤツらのBGMにチャラチャラしたポップスやデジデジしたテクノの出る幕などあるはずもなく、ヘビーなブルースロックが鳴り続ける。冒頭、海賊退治の任務を終え帰還する際の機内ではジョージア・サテライツ“KEEP YOUR HANDS TO YOURSELF”がルーズに鳴り響く。コイツらには手出ししない方が身のため…といった感じか。さらに帰還したステイサムが恋人に会いに行き、フラれるシーンではクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル“KEEP ON CHOOGLIN”がツラい男心に寄り添う。CCRはもう一曲結末近くで“BORN ON THE BAYOU”も聴ける。スタとステが中米に偵察に出かけるシーンではマウンテン“MISSISSIPPI QUEEN”をガツンとフィーチャー。そしてラストは、この物語にこれ以上ないセレクト、THIN LIZZY“THE BOYS ARE BACK IN TOWN”。女子のCDラックには絶対に並ばない曲のオンパレードだ。
ジャケはGEOGIA SATELITES、1985年リリースのデビュー・ミニ・アルバム『KEEP THE FAITH』。題名からして、男だねえ。ジョージア・サテライツの初来日公演を見に行ったのは大喪の礼の前日、『ランボー3』を映画館で見てから約半年後の事でした。
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