wild child

gakus2010-10-18

 1960年代後半を代表するアメリカンのロックバンドといえば、個人的にもそうだし、一般的にも名の挙がるザ・ドアーズ! その活動史を俯瞰するドキュメンタリー『ドアーズ/まぼろしの世界』が今月公開される。

 JFK暗殺とベトナム戦争公民権運動などの混沌の時代に産声を上げたドアーズはフロントマン、ジム・モリソンのカリスマ性と、彼の書く思索的な詞、そして独特のサイケデリックサウンド時代の寵児となる。が、有名になるほどジムのアルコールとドラッグ癖に拍車がかかり…という、ロック・ファンおなじみのストーリーを紹介。”ルールを排除しなければ変化は生まれない”と訴え、ステージでチ○コを出した罪(実際には出していない)で逮捕されるなど、体制側の脅威となった、その存在をクローズアップする。

 監督が『ジョニー・スエード』のトム・ディチロだから独特の視点を期待していたのだが、正直なところ、歴史をなぞった感は否めない。時折挿入される、”もしかしたらジムは生きているかも”的イメージ映像に膨らみがあれば…。とはいえ、ジムとファンの交流やレコーディング風景など、今まで見たことのないレアな映像もあり、それなりに満足できた。ジョニー・デップをナレーションに担ぎ出せたのはディチロの功績と言ってよく、これで本作の間口も広がったはず。入門編には最適です。

 個人的にグッと来たのは、やはり晩年のジムの逸話で、ジミ・ヘンドリックスジャニス・ジョプリンが急逝した後、ジムは”3人目は俺”と語っていたのはもちろんだが、ニューオリンズのステージでジムが倒れるパフォーマンスを見せた際、キーボードのレイ・マンザレクが”ジムの体から魂が抜けていくのが見えた”と語るところ。変化の時期が過ぎ、諦めの時代に突入した70年代矢先の出来事。ジムは自分の役目の終焉を自覚していたのかもしれない。しかし、反逆の時代は確かに存在していたのだ。

 ドアーズのジャケはあらかた載っけたと思うので、ここでは本作のサントラを。劇中のナンバーをほぼ網羅しています。

ドアーズ / まぼろしの世界 [DVD]

ドアーズ / まぼろしの世界 [DVD]