燃え尽きた悩殺爆弾

gakus2011-02-14

 ちぇ、ちぇ、ちぇ、ちぇりーぼーん!でロック・ファンにはおなじみの、1970年代後半のガールズ・バンド、THE RUNAWAYSにスポットを当てた、実話の映画化『ランナウェイズ』(3月公開)のお話。

 時は1970年代半ば、グラムからパンクへの移行期。両親の愛情を満足に得られず、デビッド・ボウイの音楽に救いを求める少女シェリー・カーリー(ダコタ・ファニング)は、クラブで音楽業界のやり手マネージャーにスカウトされ、女の子だけのロック・バンド、ザ・ランナウェイズのボーカリストとなる。かくして彼女たちのサクセス・ストーリーが始まった。音楽的なリーダーでギタリストのジョーン・ジェット(クリスティン・スチュワート)の熱意に引っ張られ、またシェリーのセクシーなコスチュームが話題を呼び、奔放な不良少女のイメージを打ち出したランナウェイズは瞬く間にスターとなる。しかし成功を楽しみつつも、急激な流れに追いつけない彼女たちの精神はダメージを受け、バンド内に不穏な空気が流れ…。

 これを見ると、ランナウェイズが”作られた”バンドであることがよくわかる。たまたまスカウトされ、バンドで歌うことなど想像もしていなかった(それゆえの劣等感も抱いている)シェリーと、とにかくロックがやりたくてバンドに飛び付いたジョーンの、この時点までの生き方はあまりに対照的で、共通の夢を追っていたとは言い難い。シェリーがシーンから完全に姿を消し、ジョーンが浮き沈みを経験しつつロックをやり続けている現在を踏まえると、この対比はより深みを帯びてくる。シェリー本人の原作に基づいているせいか、彼女が悲劇のヒロイン風に見える点は鼻に付くものの、ロック好きならばそれなりに興味深く見られるはず。

 劇中のナンバーは、もちろんランナウェイズのナンバーで、曲によってはダコタ&クリスティンら出演者がカバー。ジョーンが憧れていたスージー・クアトロ”WILD ONE"や、シェリーのアイドル、DAVID BOWIE"REBEL REBEL”等の70年代ロックをフィーチャー。いずれも反抗期ティーンの心情を仮託したナンバーで、ニヤリとさせるセレクト。劇中には、ダコタがアラジン・セインのメイクで”LADY GRINNING SOUL"を歌うシーンもあり。

 ジャケは1977年リリース、THE RUNAWAYSの来日公演の模様を収めたライブ盤『LIVE IN JAPAN』。来月CDで再発売される。当時小学生だった自分は、まだロックに熱中してはいなかったけれど、シェリーの下着風ステージ衣装のグラビアだけは、なぜか鮮烈に記憶に残っております。