クレイジーでもバカじゃない

gakus2011-06-06

 イタリア映画『人生、ここにあり!』(7月公開)は上品な邦題に反して、かなりコミカル、ある意味、アナーキーな内容。ここは、あえて快作と言い切ってしまいましょう!

 1978年、イタリアでは精神病院を閉鎖する法律が定められ、”自由こそ最良の治療”という精神の下で患者たちは退院させられたが、簡単に社会に戻れない患者は病院付属の施設に”協同組合”の名の元に集められ、医師の指導の元で簡単な労働(封筒に切手を張る作業、しかしメンバーはそれさえまともにこなせない)に従事していた。そこに送りこまれたのが、理想主義的過ぎて労働組合から厄介払いされた主人公ネッロ。ここでも理想に燃えてしまった彼は、”組合員”をまともに仕事に就かせようと、床貼りの作業を提案。この中のある労働者がアーティスティックな寄木貼りの才能を持っていたことから、”協同組合”は評判になり仕事が次々と舞い込んできた。調子に乗ったネッロは、投薬治療を進めていた医師を追いだし、事業を拡大しようと躍起になるが…。

 心を病んだ患者たちの珍行動にユーモアを漂わせつつも、そこに嫌悪感を抱かせない、ヒューマニズムを感じさせる作り。労働によって金を得た”組合員”たちが、”次は女が欲しい!”と快哉を上げるのも、笑えるだけでなく不思議と共感してしまえる。現実は的な視点で見ると、こんなにうまくはいかないだろうとも思えるが、人間ははみ出してこそ存在意義がある……という考えから軸がブレていないから、潔いと言うべきか。

 イタリア映画だからイタリア語の曲が多く、ほとんどが知らないものばかりだったが、唯一判別できたのはトラフィックの名曲”EMPTY PAGES”。組合の仕事が軌道に乗り、上り調子になって、ネッロは組合員たちに、それぞれ仕事を割り振る。雰囲気的にアッパーなシーンを、この曲のゆったりしたジャズ・グルーブの空気が軽妙に彩る。”君がいなくなってからの空白のページを埋めたい”という内容の歌詞は、ちょっと意味深。”はみ出し”とは”空白”でもあるのだろう。

 ジャケは1970年リリース、トラフィックの『JOHN BARLEYCORN MUST DIE』。フロントマンを務めた若き天才STEVE WINWOOD(クラプトンとの来日が発表されてましたな)は、この時すでに大物だが、まだ22歳。はみ出し過ぎだよ!