アイ、ロボット
先週末の全米興収チャートで、初登場ナンバーワンの座に就いたウィル・スミス主演のSFスリラー「アイ、ロボット」について。
SF小説の大家アシモフの原作をもとにした、この映画の舞台は西暦2035年のシカゴ。ロボットがPCと同様、当たり前のように生活のなかに存在している時代。ロボット三原則のもとで制御されているはずのメカが、ロボット産業の最大手である企業で起きた殺人の容疑者かもしれない…。そんな疑惑を追求するうちに、ウィル・スミス扮する刑事は、予想もしなかった大事件に行きあたる。ミステリアスな中盤から戦闘スペクタクルへと転じる後半の流れは力強く、大いに楽しめた。
スミスふんする主人公は、ある理由からロボットについて懐疑的になっており、メカを毛嫌いしている。アナクロ趣味で、2004年モデルのビンテージ物コンバースがお気に入り。そんな彼のお気に入りの音楽は、やはり古い曲…ということで、もはやアナクロと化しているリモコン操作のオーディオから、スティービー・ワンダー/STEVIE WONDERの『SUPERSTITION(邦題『迷信』)』が流れてくる。ウィル・スミスだから当然ラップと思いきや、このジャンルは2035年の未来社会ではまだ廃れていないのか、1972年のヒット曲を持ってきた。ビンテージ感を伝えるうえでは、ラップよりもソウル。2035年にどんな音楽が流行っているか予想もつかない…ということもあるが、少なくとも本作のなかでは、この選曲は大正解だろう。
1970年代前半のスティービー・ワンダーは、音楽的に急激に成長を遂げたと評価されており、とりわけポピュラー・ミュージックにシンセサイザーを導入したことは特筆に価する。この曲を収録したアルバム『TALKING BOOK』(写真)は、まさに過渡期を記録した一枚。この後もスティービーは最新技術を積極的に取り入れて、多くの名曲を残すのだが、それを踏まえると彼のナンバーがビンテージと化しているのは、テクノロジーの進化を描いた、この映画の奥行きとなっているような気がする。
主人公が追うロボットには“サニー"という名が付けられているが、エンドクレジットではBOBBY HEBB、1960年代のヒット曲『SUNNY』が流れたりして…と観ていて考えたのは、単なる思い過ごしでした…。
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