私の好きなイギリス映画 9

gakus2004-10-02

 ロディ・ドイルの小説『ザ・コミットメンツ』が映画化されたとき、強烈に嫉妬を感じたというスティーブン・フリアーズ監督が、負けじとドイルの原作を映画化。1993年に作られた、その映画「スナッパー」は「ザ・コミットメンツ」と同様、アイルランド庶民の日常を温かく描いた好編です。

 とある一家の長女が相手もわからぬ子どもを妊娠し、家族は大揺れ。とりわけ、頑固者のお父ちゃんは、娘のふしだらさに激怒したり、周囲にからかわれてまた怒ったり…。そんなお父ちゃんも、お母ちゃんにたしなめられたり、諭されたりしているうちに、生まれ来る孫への愛情がジワジワと高まってくる。とりたてて特異な見どころがあるわけではないですが、ユーモラスなエピソードの積み重ねによって、気づけばほんわかと温かい気持ちになれる映画。

 劇中ではヒロインが友人たちとカラオケに興じ、マドンナの『PAPA DON'T PREACH』を歌うというシャレになり過ぎののシーンもあったり。深刻な父とは対照的に、あっけらかんとこの歌が歌われて、なんだかおかしい。

 で、エンディングではプレスリーのヒット曲『好きにならずにいられない』がLick The Tinsなるバンドのカバーでフィーチャーされる。ピッコロのような音色と素朴な女性Vo.で演奏される、このカバーはアイリッシュ・トラッド風味で、なかなか味があるのだが、このナンバー、実はこれ以前に他の映画のエンディングに使われていて、初めてこの映画を観たときは驚いた。1987年のアメリカ映画「恋しくて」も、これとまったく同じカバーがエンディングで流れ、当然演奏しているバンドも一緒。調べてみるとLick The Tinsは、この「恋しくて」のサントラ用に結成されたバンドらしく、他にアルバムをリリースした形跡はない。確かにアレンジからして「スナッパー」のエンディングにふさわしい曲にも思えるから、フリアーズは、このカバーにも嫉妬したのでは…。

 写真は「恋しくて」のサントラ盤。「スナッパー」のサントラは確か発売されていないはずなので、例の『好きにならずにいられない』を聴きたい方は、こちらでどうぞ。このころのメアリー・スチュアート・マスターソンはかわいかったなあ…。



恋しくて [DVD]

恋しくて [DVD]