バァッドアス!

gakus2005-07-28

 70年代のブラック・ムービーの先駆的な作品として知られる「スウィート・スウィートバック」。その監督・主演を務めたメルヴィン・ヴァン・ピーブルズが、いかなる苦難を越えてこの映画を作ったのかを、息子のマリオ・ヴァン・ピーブルズが映画にした。その「BAADASSSSS!」(9月公開)は、文句なしの快作でした。

 「ウォーターメロン・マン」で映画監督として成功したメルヴィンは、次回作で黒人のための娯楽作を作ろうと決意するが、スタジオ側は首を縦にふらず、結局インディーズ・スタイルで製作することに。ポルノ撮影に見せかけて組合の監視の目をくぐり抜け、少ない予算と限られた日数で、ハリウッドで初めての“黒人が白人を殺して逃げ切る映画"を作ろうとするメルヴィン。無一文になり、すべてを失っても映画を完成させようとする、その情熱にグッとくる。

 ここでメルヴィンを演じるのは、もちろん息子のマリオ本人。映画の中ではメルヴィンと幼き日のマリオのドラマもあり、ここも胸に迫るものがある。周囲の反対を押し切り、主人公の童貞喪失シーンをマリオに演じさせようとするメルヴィン。そんな父に複雑な気持ちで従いながらも、尊敬の念を失わないマリオ。息子が父の映画を撮ったという事実を踏まえて劇中の親子関係を見ると、それだけでなんだか泣けてくる。

 「スウィート・スウィートバック」のテーマ曲はご存知のとおり、アース、ウィンド&ファイヤーによるもので、彼らにとってもこの映画の成功は注目を集めるきっかけとなった。「BAADASSSSS!」では、彼らの起用の過程も描かれているが、これがなかなか面白い。メルヴィンには女優志望のアシスタントがいて、執拗に自分の起用をアピールし、念願かなって出演が決定するが、撮影直前に“裸はダメ、彼氏がせ許さない"という理由で降板する。この彼氏がモーリス・ホワイトで、後に恋人を通してメルヴィンに紹介され、あの超グルーヴィーなテーマ曲を作ることになる。この曲のセッション・シーンは、メルヴィン&マリオの親子も参加した、ある意味で、この映画のひとつのクライマックスとなっている。

 ジャケは、70年代のブラック・シネマの名曲を集めたオムニバス『BAADASSSSS CINEMA』。ジェームス・ブラウン(「ブラック・シーザー」)、カーティス・メイフィールド(「スーパーフライ」)とともに収録されたアース・ウィンド&ファイヤーのナンバーは、このコンピの締めを飾っている。ジャケもエロくて好き。それはともかく、「スウィート・スウィートバック」のサントラ、この機会に再発してくれんかなあ。

バッドアス! [DVD]

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