谷間の町に吹く風

gakus2005-10-12

 12月公開予定の「ダウン・イン・ザ・バレー」は、LA郊外サンフェルナンドバレーの退屈な生活から逃げ出したいと願う少女と、カウボーイもどきの男の出会いと悲劇的な恋を描いたヒューマン・ドラマ。現代の生活になじめず反社会的な嘘をついては悲劇を悪化させるカウボーイをエドワード・ノートンが演じている。ヒロインには「サーティーン/あの頃欲しかった愛のこと」で注目されたエヴァン・レイチェル・ウッド。説明的な描写を排除した作りが寓話のような味を醸し出し、見ていて「インディアン・ランナー」を思い出させた。

 全編フォーキーで渋いナンバーがつらなり、いい味を出しているが、これはほとんどがピーター・サレットというシンガーソングライターのナンバー。エドワード・ノートンの監督作「僕たちのアナ・バナナ」で作曲を手がけた人とのこと。ノートンのお気に入りということで、強い推薦があったのではと推察。

 これ以外で印象に残ったのは、カウボーイのクラブでヒロインとノートンが踊ってるシーンで起用されたMAZZY STARの『HAPPY』。ギターノイズに包まれたミドルテンポのリズムにホープサンドヴァルのダルなボーカルが乗っかって、ハッピーとはいえその後の皮肉な運命を予感させるに十分。MAZZY STARはもう一曲使用されていて、ふたりが引き裂かれ孤独をかみ締めるシーンで、『ALL YOUR SISTRERS』が流れ、フォーキーな響きがもの悲しさを伝えている。どちらも空気の冷たさが風のように駆け抜ける、荒涼とした雰囲気アリ。

 ジャケはMAZZY STAR、1996年のサード・アルバム『AMONG MY SWAN』。上記2曲を収録した地味渋盤。