Sweet and Tender…

gakus2006-03-31

 イギリス映画「フーリガン」(6月公開)は今年観た映画のなかで、個人的には5本の指に入るであろうぐらいのお気に入り。イライジャ・ウッドふんする、大学を退学となってロンドンに飛んだ米国人青年が、いとこに誘われてフーリガンのグループ(こういう連帯をファームと呼ぶらしい)に入り、知らなかった世界を目の当たりにする。

 フーリガンの中には無軌道に暴れているだけのラッドな連中もいるだろうが、ここで描かれるのはもうちょっとマシな人々。イライジャのいとこはファームのリーダー格で、自身の誇りのために敵対ファームと戦うという、一応フーリガン哲学のようなものを持っている。ケンカさえしたことがなかったイライジャは、そこに納得し、なおかつ“痛みさえ快感"という「ファイト・クラブ」的なスピリットを感じて、その世界にはまりこむ。とはいえ、暴力を振るっていることに違いはなく、ヒストリー・オブ・バイオレンスからは逃れられない…という非情な現実も目の当たりにする。そんなドラマの熱はもちろん、彼らの日常がイギリス映画らしい生活感とともに描かれ、普段は試合後に暴れている連中にも家庭があり、仕事があることをサラリとみせてくれるのが、またいい。

 ドラマを面白くするのは、フーリガンが警察とマスコミを何より嫌う傾向にあるということ。イライジャは実は大学でマスコミ学を専攻していたのだが、そんな傾向を知らされ、つい歴史を専攻していた、と嘘をつく。それが後に問題を引き起こすことになる。

 で、警察、マスコミの次に彼らが嫌うのは米国人。結束の固いファーム内にもイライジャの加入を喜ばない者がいて、始終目の敵のように因縁をつけてくるヤツがいるのだが、このキャラを演じているレオ・グレゴリーという俳優が、なかなかよろしい。反抗的で危なげな目つきは、ザ・フォールのマーク・E・スミスの若いころを思わせる。

 音楽面で印象的なのは、ストーン・ローゼズ/THE STONE ROSESの2曲。前半、仲間に迎えられたイライジャがパブで皆とビールを飲みまくっているシーンで『WATERFALL』が響く。歌詞の中の“AMERICAN SATELITES WON"って、イライジャのことか!? もう一曲はマンチェスターのファームを急襲して逃げるシーンで流れる『I WANNA BE ADORED』。憧れられたい、尊敬されたい、なめられたくないゆえの行為に寄り添うナイスなチョイス。

 ジャケは、その『I WANNA BE ADORED』の12インチ・シングル。ここに収録されているエディット・バージョンはイントロの盛り上がりが大幅に短縮されているので、アルバム・バージョンを聴き慣れると拍子抜けしてしまう。

フーリガン [DVD]

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