ロックは置いてません

gakus2006-10-18

死ぬまでにしたい10のこと」のイザベル・コイシェ監督と主演のサラ・ポーリーが再び顔を合わせた「あなたになら言える秘密のこと」(2007年2月公開)のお話。

 孤独を好み、友人も作らず単調な日々を過ごす一人暮らしのヒロインが、働きすぎを理由に休暇をとらされるハメになり、しょうがなくバカンスに出かける。そこで看護婦を募集していることを知り、名乗りを上げた彼女は、海に浮かぶ閉鎖寸前の石油採掘所へ連れて行かれ、火傷を負った作業員(ティム・ロビンス)の看病をすることになる。事故のせいで一時的に視力を失っているが人なつっこいロビンスはヒロインのかたくなな心をほぐし、やがて彼女は孤独を好むようになった理由を語りだす…。前半はユーモラスなタッチでドラマが展開し、石油採掘所の愛すべき人々のキャラクターをのほほんと描いているが、後半でヒロインが明かす“秘密”はグググッと重く、ヘビーな後味を残す。

 舞台となる石油採掘所には専任のシェフがいて、イタリア料理の日カンツォーネをラジカセでかけるなど、その日の料理に遭ったBGMを食堂で流している。で、タフガイ風の労働者コンビそんなBGMにウンザリして、“何でもいいからロックが聴きたい、ディープ・パープルとかキンクスはないのか!?"とケチをつける。一見、ワイルドなこのふたりにも秘密があるんだけど、そこは笑えました。

 結局、劇中では彼らがリクエストしたようなビートの効いたナンバーは聴けず、このコンビが余興でショーを演じる際に歌うBLOOD,SWEAT & TEARS『YOU'VE MADE ME SO VERY HAPPY』がアメリカンなソウル・テイストを醸し出している程度。全体的にスローな曲が中心なのだが、雨のシーンを彩るANTONY & THE JOHNSONS『HOPE THERE’S SOMEONE』やエンド・クレジットで流れるDAVID BYRNE『TINY APOCALYPSE』など印象的なナンバーは多い。とりわけ、TOM WAITS『ALL THE WORLD IS GREEN』は“秘密"が明かされた後のシーンで延々とフィーチャーされる。“男たちは愚かなことばかりする/世界が緑に包まれていた日々を呼び戻せる/ふたりでそんなふりをしてみよう”という歌詞が染みる。これは訳詞を字幕で出してほしいところ。

 ジャケは、このナンバーを収めたトム・ウェィツ、2002年のアルバム『BLOOD MONEY』。

あなたになら言える秘密のこと [DVD]

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