このバカ映画を埋もれさすな!その4

gakus2006-11-14

 ケビン・スミスのデビュー作「クラークス」は大好きな映画で、コンビニ店員のだらけた日常がリアルかつユーモラスに描かれ、見た当時はとても他人事と思えんなあ…と感じたものだった。あれから10年以上が経ち、今年スミスは「CLERKS 2」を完成させた。すでに全米では公開済みなんだけど、これまた日本公開のメドが立っていないようで歯がゆい。

 あれから12年が過ぎ、ある日突然コンビニが火事で焼け落ちてしまい、職を失った主人公ダンテは相棒のランドールと一緒にハンバーガー屋で働きだす。コンビニの前でハッパを売ってたジェイ&サイレント・ボブもなぜか付いてきて、この店の前で相変わらずダラダラしている。職場が変わったとはいえダンテ&ランドールのコンビも相変わらずで大人になりきれていない様子。ダンテは婚約者がいるものの、女店長(ロザリオ・ドーソン。ここでも最高)と一度エッチして事をややこしくし、ランドールも理屈っぽい性格はそのままで、「ロード・オブ・ザ・リング」よりも「スター・ウォーズ」が偉いことを延々とまくしたて、人種差別用語についての議論の際にもムキになって反論してくる。ジェイとサイレント・ボブも相変わらずで、ヒマつぶしに「羊たちの沈黙」のバッファロー・ビルごっこをやってたり(これはトレーラーでも見られるけど笑えます)。人間の習性はそう大きくは変わらんものなんだけど、少しずつでも進歩があることにホッとさせる、これまたいい映画なんだけどなあ。

 音楽の点ではいちばん印象的なのは、ボブのラジカセから流れるJACKSON 5の『ABC』に併せて、ダンテとヒロイン、ロザリオ・ドーソンが店の屋上で踊っているシーン。店内で仕事しているバイト君も踊り出したりして、ちょっとしたミュージカル仕立て。よどんだ日常の中の、ささやかな祝祭性がキラキラしてみえるいいシーンでした。他では、ある事実が発覚してショックを受けたダンテがドーソンを追いかけるシーンでフィーチャーされるSMASHING PUMPKINSの『1979』がイイ味。エンドクレジットでフィーチャーされるSOUL ASYLUM『MISERY』も気持ちよく響いています。

 ジャケはTALKING HEADS、1988年のシングル『(NOTHING BUT)FLOWERS』。この曲はオープニング・クレジットでのフィーチャーで、消失したコンビニを捨てて新天地を目指し、車を走らせるふたりのドライブ風景にかぶさる。ラテンのリズムがのどかな空気を醸し出しています。