ダイアナも鑑賞可能

gakus2006-12-19

 『ドリームガールズ』(2月公開)はアカデミー賞候補といわれれば、なるほどと思える華やかなミュージカルで、見事なエンターテインメントと呼んで差し支えない。ご存知のとおり、DIANNA ROSS & THE SUPREMESの成功物語をモチーフにした大ヒット舞台ミュージカルの映画化で、1960年代を背景に女の子3人組のボーカル・グループの成功と挫折を描いている。舞台もズバリ、デトロイトで60’sモータウン・レコードの本拠地。

 前回のエントリーでふれたとおり、美術や衣装はモロにシュプリームスやモータウンを意識しており、他にも下のSUPREMES等(右のみ、同じモータウンのMARTHA & THE VANDELLAS)のデザインを真似たレコード・ジャケットが見られる。

 舞台版は見ていないが、ネルソン・ジョージ著『モータウン・ミュージック』によれば、かなり辛らつな内容となっていたという。モータウン総帥ベリー・ゴーディJr.に相当するレコード会社社長カーティスは他人を食い物にする欲深い人物、ダイアナ・ロスに当たるディーナはスターになるときだけ気骨を示す野心家の女性として描かれていたとか。しかし、この映画版ではジェイミー・フォックスふんするカーティスだけが、いわば悪役で、ビヨンセが演じたディーナは何もしてないに等しく、むしろ犠牲者風情。ダイアナ・ロス本人は舞台を見に行かなかったというが、映画ならお気に召されるのでは。

 そんなわけで、ひたすら利益の追求に奔走する劇中のカーティスは、1960年代は白人マーケットにクロスオーバーするポップス、70年代にはディスコと、売れ線に飛び乗る才覚を持ってる。印象的だったのは、1960年代末、ディーナらがミュージシャンとセッションでメッセージ性の強いナンバーを歌いカーティスに聴かせるが、“いい曲だが、メッセージが邪魔だ”と切って捨てるところ。この曲はマーヴィン・ゲイの「What's Going On」をほうふつさせる。ゴーディも実際、マーヴィンのこの曲をリリースするのを渋ったといわれている。

 が、ゴーディ本人は劇中のカーティスよりも上手で、実はメッセージ・ソングが商売になることに気づいていた。「WHAT'S GOING ON」より2年早い1968年、SUPREMESは私生児を題材にした「LOVE CHILD」をチャートのトップに送り込むが、これはゴーディも作曲に噛んでいたのであります。というわけで、ジャケは、その曲を収めた同年の同タイトルのアルバム。

ドリームガールズ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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