空気に酔ったものの…

gakus2007-01-10

 1949年のアカデミー賞を受賞したロバート・ロッセン監督の社会派ドラマ『オール・ザ・キングスメン』のリメイクが、この春公開される。今回はロバート・ベン・ウォーレンの原作に、より忠実な映画化。

 1949年のルイジアナ州で政界を浄化しようと知事選に立候補した男(ショーン・ペン)が当選を果たすや、理想を失って権力の垢にまみれてゆく。本作は、ロッセン版のその骨組みに、主人公の秘書となったことで運命を狂わせてしまう元新聞記者(ジュード・ロウ)の虚無も描かれており、骨太な社会派劇だったロッセン版とは感触がガラッと異なっている。むしろ、権力を得た者とそれに翻弄される者の人間ドラマというべき。

 舞台が米国南部ということで、ショーン・ペンジュード・ロウが初めて会うプールバーでは、ブルースが聞こえてくる。HOWLIN’ WOLFの有名な「SMOKESTACK LIGHTNI’」がそれ。薄暗い木造りの壁、いかにも高そうな湿度、タバコの煙。そんな室内の空気に、ウルフの唸るような声とルーズなビートがマッチしている。いかにもディープ・サウスという雰囲気。

 で、ジャケットはこの曲を収録した名門チェス・レコードからの1962年のアルバム「MOANIN’ IN THE MOONLIGHT」…なのだが、このアルバムのライナーノートによると、このアルバムに収められた曲は1951〜58年にかけてレコーディングされたものとのこと。1949年のバーで、この曲が流れるのは時代考証のミス!?