反体制者としてのジョン・レノン
今年の12月はジョン・レノン関連の映画が2本公開されますが、そのうちのひとつ『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』の話を。これはタイトルのとおり、ジョン・レノンとアメリカの長きに渡る闘いを追ったドキュメンタリー。
ビートルズ時代の“キリストより有名”発言を皮切りに、ヨーコ・オノと出会った以後のベトナム戦争に対する反戦運動によってニクソン政権にマークされ、ニューヨークへの移住も認められず、あげくのはてに盗聴・尾行され、その行動はFBIにしっかりマークされていた。というのも、再選を目指すニクソンにとって若者票を左右するジョンの影響力は脅威であったから。ニクソンが再選を果たすと、途端にジョンへのマークは緩くなった。が、ジョンにしたことと同じことを政敵にもやっていた、いわゆるウォーターゲート事件によってニクソンが辞職に追い込まれたのは周知の通り。
映画の中には、当時を知る人々の証言が多数収められており、もちろんヨーコのインタビューも含まれる。その中で彼女は“ジョンと私には共通点があった。ふたりとも、とてつもなく反体制的だった”と語る。反戦団体は、そんなジョンの影響力に目をつけて接近。その結果、彼は反戦運動の広告塔となって非難の矢面に立たされることになるのだが、そんなポジションを引き受けた芯の強さは、やはり感動的でさえある。
さて、なぜこの映画が今、製作されたのか。それは当時のニクソン政権の保守的姿勢が、現在のブッシュ政権のそれとリンクしているからに他ならない。法の下で言動が監視・管理されつつあるアメリカの現状を視野に入れている、ともいえるだろう。しかし残念ながら、21世紀にはジョンほど影響力のあるアーティストはもう存在しない。
昨年リリースされたサントラからも想像がつくと思うが、全編ジョンのナンバーのオンパレード。何曲使用されているのかは、とてもじゃないが一度見たたげでは把握しきれなかった。ジャケは、この映画にレコーディング風景が収められている(そのメイキングは以前単体でDVD化されている)『GIVE PEACE A CHANCE』の国内盤7インチ。1981年の再発盤です。
次回エントリーでは、ジョンの曲がまったく使用されない、もうひとつのジョン関連の映画を。
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