イタいほど十代
全米賞レースを賑わせつつアカデミー賞ではスルーされてしまったけれど、見どころがないわけではなく、むしろある層にはストライクに入るであろうシャーリズ・セロン主演の『ヤング≒アダルト』(2月公開)。『JUNO/ジュノ』のジェイソン・ライトマン監督と脚本家ディアブロ・コディの再タッグ作品です。
シャーリズふんする主人公は都会で働く、パッとしないゴーストライター、30代、バツイチ、独身。自宅では着古したキティちゃんのTシャツを着てスッピンでデカいペットボトルのコーラをガブ飲みするくせに、外面はいつでもメイクをバリッとキメて、気に入った男がいればベッドイン。そんな気ままな生活にも疲れたかな…と思っていた矢先、田舎で家庭を築いた高校時代の元カレから子どもの誕生パーティへのお誘いメールが届く。どういう思考回路でそう考えたかは知らないが、ヒロインは”彼はまだ私のことを好きなはず!”と思い込み、彼の心を取り戻そうと臨戦態勢を整えて帰郷する。が、地元の昔の友人たちのすっかり落ち着いた日常から浮いてしまうことは避けられず…。
コディ本人を投影しているのかどうかは知らないが、ヒロインのイタさがリアルで生々しいのは、こんなストーリーだけでも察することができるはず。ユーモアで薄めようと思えば薄められたはずだが、今回のライトマンはトコトン、やってしまう方を選んだようで、コレは好き嫌いがハッキリ分かれるだろう。自分!? 田舎者で見栄っ張りの三流フリーライターが、この主人公に共感しないワケがないっすよ…。
ヒロインが帰郷しようとして車で持ち込むカセットテープは、元カレが高校時代に作ってくれた思い出深いもの。流れてきたのはティーンエイジ・ファンクラブ"THE CONCEPT"。これを繰り返し、繰り返しリピートして聴くのがまたイタいのだが、この曲に関していえば、後にさらにイタい展開が待っている。とにかく、この曲は何度もかかるので本作のメインテーマと呼んでも差し支えない。
ヒロインが90年代前半に高校時代を過ごしているという設定だから、他にもリプレイスメンツやダイナソーJr.、ヴェルカ・ソルト、フォー・ノン・ブロンズといった当時のオルタナ・アーティストの楽曲が聴こえてくる。逆にエンドクレジットではダイアナ・ロスのシブい曲”WHEN WE GROW UP”で意表を突いてくる。もちろん、この歌詞も意味ありげ。
ジャケは1991年リリース、TEENAGE FANCLUBのUK盤シングル『THE CONCEPT』。
↑このトレーラーで使われているDAVID BOWIE"QUEEN BITCH"も毒を感じさせ、最高!