アーサー

gakus2004-07-13

 最近ロック絡みの新作映画になかなか出会えず。今日は「キング・アーサー」を観たけれど、当然ながらロックはフィーチャーされてません。「ロック・ユー!」みたいな時代劇ばかっりになっちゃったら、それはそれで興ざめだけど…。いや、「ロック・ユー!」は好きです、念のため。

 アーサーといえば、キングでも何でもない市井の英国人の生活を歌にしたキンクス/KINKS、1969年のアルバム『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡』(写真)を強引に思い出してみたりして。これはイギリスのTV映画用に作られたサントラみたいなもので、アルバム単位ではコンセプト物として聴ける。このアルバムの主人公アーサーはリーダー、レイ・デイビスの義兄がモデルとなっているとのこと。女王陛下の国に生まれ、労働者階級の一人として大人になった、ごくフツーの人間のお話。いかんせん内容が地味で、同じコンセプトアルバムでも同時期に出たTHE WHOの『TOMMY』の陰に隠れて、セールス的にも評価的にも存在感が薄い。とはいえ、ファンタジー性の強い『TOMMY』が強力な吸引力を持ったアルバムであることは認めつつ、この『アーサー…』も聴けば聴くほど味の出てくるアルバムなのです。

 代表曲『VICTORIA』におけるロックンロールのカタルシス、『BRAINWASHED』のヒネクレたビート感、『SHANGRI-LA』の抑揚のあるアレンジなど聴きどころは多い。シングル曲『DRIVIN'』は郊外へのドライブの楽しみを歌ったものだが、実はレイ・デイビスは運転免許を持っていないらしい。教習所をドロップアウトした過去があると何かの本で読んだが、その辺が自分と重なるせいか、個人的な市井感も倍増してしまう。ビーチ・ボーイズのメンバーがサーフィンできないのと似た感触。

 と言ってみたものの、KINKSのディスコグラフィーを眺めてみても『VILLAGE GREEN〜』と『LOLA〜』の傑作2枚の間に挟まれると、やっぱり地味だわな…。曲単位では、よく出来てるなあと思うけど。

 先述のWHOのアルバムを映画化したケン・ラッセルの「TOMMY」は来月、特典満載のDVDで再発される模様。これよりも早かったKINKSのコンセプト・アルバム『VILLAGE GREEN〜』は現在3枚組スペシャルエディションで再発されている。8月には“またか!?”の数種リマスターも出るらしく、懐具合が気になる今日この頃…。