ベルトルッチの中二病

gakus2013-04-11

 ベルナルド・ベルドルッチに対する映画ファンの一般的なイメージは、アカデミー賞を受賞した名匠、退廃美を刻む鬼才……というものだと思うけれど、個人的には時々顔を覗かせる青臭さが本質なのでは……という気がして仕方なかった。初期の『革命前夜』『暗殺のオペラ』の頭でっかちに行動がついていかないキャラクター像はもちろん、円熟期の『ルナ』(祝・DVD化!)や『魅せられて』『ドリーマーズ』も目線が若過ぎやしないか? 『ラストタンゴ・イン・パリ』のマーロン・ブランドも結局のところ、中二病から脱せずに破滅したようなものでは? それが正解かどうかはともかく(いや、不正解ですとも)、今月公開される10年ぶりの新作『孤独な天使たち』も、そんな青臭さがむせ返るほど充満した青春映画でした。

 主人公は他人との付き合いを避けるようにして暮らす14歳の少年。学校のスキー旅行に行くと嘘をつき、彼は自宅マンションの地下にある物置小屋に閉じこもり、わずらわしさから解放された時間を過ごそうとする。ところが、麻薬中毒の異母姉に見つかり、行き場がないという彼女と嫌々ながら過ごすことになり…。

 ベルトルッチに本作のインスピレーションをあたえたのは、デビッド・ボウイの“LONELY BOY, LONELY GIRL”。アルバム『SPACE ODDITY』の40周年記念エディションに収録されたタイトル曲のイタリア語バージョン。“SPACE ODDITY”はご存じのとおり、宇宙飛行士トム少佐が宇宙空間で狂気にとらわれるという歌だが、イタリア語バージョンの方はまったく歌詞が変わっていて、タイトルどおり孤独なティーンエイジャーの心情をつづったもの。鬼才の中二マインドが共鳴したのも、なんとなく頷ける。

 この曲は劇中でもフィーチャーされているが、オリジナルの“SPACE ODDITY”もラストでしっかり流れてくる。ここで連想されるのはボウイが、後に歌った“ASHES TO ASHES”。「トム少佐はジャンキーだった」という歌詞が、やはりヤク中である主人公の異母姉と重なり、見ていて想像力(というか、深読みへの意欲)を刺激される。少年は異母姉がヤク中であることは知っていても、それがどういうものかを、まだ理解してはいない。成長段階としては“SPACE〜”を卒業して“ASHES〜”へ向かうあたりにたどり着いて映画は終わる。ネタバレになるので詳しくは書かないけれど、その辺を考えながら見ると面白く見られると思う。

 どうでもいいが、ベルトルッチもボウイも10年ぶりの新作をほぼ同時期に発表する……というのも奇遇なり。

 主人公がヘッドフォンで聴く音楽も、やはりそんな心情にフィットしたものばかり。フジロックでの来日も決まったTHE CURE“BOYS DON’T CRY”を皮切りに、レッチリMUSEといった、さびしんぼうが好みそうな曲が並ぶ。ARCADE FIREの"Rebellion (Lies)"が鳴った時は震えたが、残念ながら高揚する後半部に進む前に途切れてしまう。悔しいので、2005年リリース、このUK盤シングルのジャケを。