70過ぎて下積み途中

gakus2004-12-06

 ブルース・ムービー・プロジェクトの集大成的なコンサート・ドキュメンタリー「ライトニング・イン・ア・ボトル」(05年2月公開)を観る。

 2003年2月、ブルース生誕百年を記念してNYで行なわれたコンサートの模様を収めている。ソロモン・バーク、B.B.キング、バディ・ガイ、メイヴィス・ステイプルズなどの黒人音楽の重要人物から、ジョン・フォガティ、エアロスミススティーブン・タイラージョー・ペリードクター・ジョンなどなど、入れ代わり立ち代わり、さまざまなアテーティストが登場してはホットなパフォーマンスを披露。いずれも甲乙つけがたい演奏で、どれかひとつ印象に残るものを挙げろといわれると困ってしまう。

 気になったことを一点。ソロモン・バークはずっと座りっぱなしで野太いシャウトを聴かせるが、対照的に客は立ち上がって踊りまくっている。よく見ると客席は白人ばっか。最後に“戦争反対”と言ってパフォーマンス終了。この後パブリック・エネミーのチャック・Dが『ブーン・ブーン』を、反戦のメッセージをこめた替え歌にして歌い、おそらくこの日のなかではもっとも激しいステージを見せるのだが、なぜか客席はみんな座っている。引いているのか? ブルースを聴く主要層はコンサバ白人なのか?“70歳を過ぎてまだ下積みさ”…と、あるブルースマンが劇中でブルースの奥深さについて語っていたが、“ブルースっ渋いよね”と気取ってる白人が主要な客層だとしたら、やっぱイヤだなあ。まあ思い過ごしかもしれませんが。

 チラシの集合写真にはジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(現ブルース・エクスプロージョン)の面々も並んでいるが、なぜか劇中ではパフォーマンスは見られない。誰でも一聴くしてわかる定型ブルースではなく、彼らのような破壊・再構築した“今の”ブルースを聴かせるのも、意義のあることだと思うが…。

 以下、余談。ジョンスペど同様に、“今の”ブルースをやっているバンド、22-20sのライブを先日観ましたが、これまた大変インパクトのあるステージだった。荒々しいギターリフとやたらとパワフルなドラムにグイグイ引っ張られる演奏。4人組なのに重戦車級の迫力がある。イギリスからドンドン出てくるあまたの新人バンドとは、明らかに一線を画する硬派スタイル。アンコールではスリム・ハーポの『I'M A KING BEE』をカバーしていたが、これがやはり“今の”音になっている。この曲、「ライトニング・イン・ア・ボトル」ではエアロの2人が演奏しているが、カバーのスタンスの違いは歴然。こういう若い表現方法がブルースとして浸透しないと、ブルースそのものがコンサバ化するんじゃないか、と思ったりしました。

 ジャケはソロモン・バーク1965年のアルバム『THE BEST OF SOLOMON BURKE 』で、劇中オーディエンスを大いに盛り上げた『DOWN IN THE VALLEY』収録。この曲は、近年の映画では「2デイズ」で、オーティス・レディングによるバージョンが印象的に使われていました。

ライトニング・イン・ア・ボトル [DVD]

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