バングラデシュ考

gakus2005-11-04

 昨日に続いて、ジョージ・ハリスン主催による1971年のチャリティ・コンサートの模様を追ったライブ映画「コンサート・フォー・バングラデシュ」の話。

 このDVDの特典ディスクには関係者が1971年当時を振り返るドキュメンタリーが収録されていて、これがなかなか面白い。ビリー・プレストンのステージアクトに会場で見ていたフィル・スペクターが仰天したとか、エリック・クラプトンボブ・ディランが本当に直前まで出演するかどうかわからなかったとか、興味深い逸話が聞ける。クラプトンは私生活に問題を抱えていた時期(もちろんドラッグ)で、なるほど、なんだけど、ディランは“こんな大会場は俺には合わない”と前日のリハーサルにおよんで、なおジョージに漏らしたとか。それに対するジョージの返答が“俺にも合わないよ”。ジョージらしい説得と、妙に納得してしまった。

 このコンサート自体、ジョージの人柄がよく現われていると思う。昨日も書いたが、気の置けない友人だけを呼んだ、なんともアットホームな空間がステージ上で作られている。他のビートルズのメンバーなら、こうはいかなかったはず。ポール・マッカートニーが主催したなら、今もっとも売れてるメンツが顔をそろえた、それこそライブ・エイド級のイベントが可能で収益も多いが、同時にエゴのぶつかり合いや売名論争などの、この手のイベントにはありがちな問題も起こりそう。また、ジョン・レノンだったら単独でやるか、または偽善と切り捨ててやらないか、のどちらかだと思う。リンゴ・スターは自分から仕掛けないが、声をかけられれば何処へでも出向いて盛り上げるタイプだろう。“友達(=ラヴィ・シャンカール)に頼まれたから(コンサートを)やった”というジョージに、飢餓を救おうというご大層な目的はなかった。できることをやった、それだけのことだと思う。

 ジャケはコンサートの最後にジョージが歌う『BANGLA DESH』。その7インチ国内盤シングル。