普通の人々の祭典
昨日触れたジョー・ストラマーのドキュメンタリー映画の前に、同作の監督でミュージック・ビデオ界のベテラン、ジュリアン・テンプルによるドキュメンタリー『グラストンベリー』が6月に日本公開される。これはフジロックも手本にしているという、イギリスの有名な野外ロック・フェス、グラストンベリー・フェスティバルの記録。
広大な農場を開放して行なわれ、毎年10数万人を動員するこのフェスの全貌を、多角度から検証。農場主で主催者のマイケル・イーヴィスが歴史や運営の苦労、政治性や祝祭性を語り、参加者は祭の熱狂に酔いながら興奮の声を寄せ、アーティストたちは気合の入ったパフォーマンスを披露する。そこから、3日間にわたるフェスの醍醐味が見えてくるが、一方で商業化に対する批判、静かな生活を奪われる地元住民の不満、フェスに協力してきたトラヴェラーとイーヴィスの対立といった、ネガティブな部分も押さえている。結果、この手のドキュメンタリーには珍しく2時間を優に越える映画となってしまい、また多種フッテージが何年のものであるのかまったく表示されず、映画が時代を錯綜しながら進んでいくので、散漫な印象はぬぐえない。とはいえ、ロックファンならば一度は行きたいグラストンベリー、映画の構成的な不満以前に楽しんで見てしまったのも事実。
で、やはり注目してしまうのはステージの模様。古くはTERRY REIDの70年代のパフォーマンス、BLUR、RADIOHEAD、PULPらのブリットポップ全盛期のころと思われるステージ、BABYSHAMBLES(ピート、客席にダイブ!)、BRAVERY(ベーシスト全裸!)といった最近のバンドの演奏も聴ける。が、こっちは各々、短いのが難点。それでも鳥肌が立つ瞬間は何度かあって、とりわけ映画の終盤で出てくるステージ映像は印象深い。RAY DAVIESが弾き語りで歌う「WATERLOO SUNSET」では客席のオッサンが目を閉じて感慨深げに一緒に歌っていたり、“しゃらっらー”の大合唱になったり。PULPのジャービスは、この人には珍しい熱いMCの後に「COMMON PEOPLE」を演奏し、これまた大合唱。そして30年ぶりに出演したDAVID BOWIEの「HEROES」。どれも、市井の人々の感情を反映した歌だが、これを連ねたことに本作の意味があるように思える。
JOE STRUMMER & THE MESCALEROSのパフォーマンスもあって、「STRAIGHT TO HELL」の演奏中に舞台下に降りて、カメラマンに暴行するというヤンチャぶりを披露。後でジュリアン・テンプルに謝罪したというが、この人らしいなあと納得。
そしてジャケはMORRISSEY、2004年リリースのシングル「FIRST OF THE GANG TO DIE」。この曲のパフォーマンスではサビの部分で、やはり客席大合唱になるのだが、そこにいたかったと、もっとも痛烈に思った瞬間でした。
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