繊細過ぎたダメ男

gakus2007-10-24

 出張中。LAではまだ1館でしか上映されていない『CONTROL』を見る。以前からこのブログでも触れているJOY DIVISIONの故イアン・カーティスの伝記映画。デビッド・ボウイにはまっていた高校時代に始まり、みずから命を絶つまでの数年の物語で、夫人のデボラ・カーティスが記したノンフィクションがベースとなっている。そのせいもあるのだろうけれど、漠然とカリスマ性をとらえた作品というよりは、寂しがりやで脆くて危ういイアンのダメっぷり、すなわち人間性がビビッドにとらえられている。デボラと愛人との間で揺れ動き、子供が生まれてもその事実を受け止めきれず、モゾモゾしている成長しきれないイアン。必要以上に神格化することなく、人間的な弱さに視点を置いている点に好感が持てる。

 脆さを露呈する人間性とは裏腹に、JOY DIVISIONの音楽はどんどん進化する。ワルシャワ時代のラフなパンク・スタイルが美しく純化されていく、そんな変遷が見て取れる点でも秀逸。

 主演のサム・ライリーはイアンに本当にソックリ。目力があるというか、存在感がとにかく強烈で、痙攣的ダンスまでよく似ている。また、全編モノクロの彫りの深い映像は監督アントン・コービンのいい仕事。とにかくスタイリッシュで、美しい。音楽的には、“SHE'S LOST CONTROL”のプシュプシュいってるリズムが、スプレー缶で出されていたことは自分的には新たな発見だった。

 1980年5月18日の、あのシーンに重なる“ATMOSPHERE”のシングル・ジャケを載せました。1980年リリース。

 ちなみに、この映画、配給も公開劇場も決定しているので、そう遠くないうちに日本でも観られるはず。


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http://d.hatena.ne.jp/gakus/20070922


<追記>
『コントロール』の邦題で日本公開。

コントロール デラックス版 [DVD]

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JOY DIVISION (デラックス・エディション) [DVD]

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