アクティブな21世紀型ホームズ

gakus2010-02-08

 コナン・ドイルが生んだおなじみの名探偵の活躍を描く『シャーロック・ホームズ』(3月公開)は、ミステリーというよりむしろ冒険アクション。『ロックンローラ』で復活したガイ・リッチー監督がロバート・ダウニーJr.(ゴルーデングローブ賞主演男優賞受賞)を主演に迎え、ハリウッド・テイストの活劇に仕立て上げた。

 19世紀末のロンドンで若い女性を狙った儀式風の殺人事件が発生し、黒魔術を信奉する貴族が犯人として逮捕され、死刑に処される。ところが、この貴族が生前に予告したとおり、さらなる殺人事件が起こり、しかもこの貴族は復活していた!ホームズは相棒ワトソンとともに、この恐ろしい敵に立ち向かう。チェイスや高所での奮闘は一世紀前のジェームズ・ボンドと言うべきか。発明オタクで、拳闘の達人というホームズのキャラには原作への敬意が汲み取れて、こちらも好感が持てる。推理劇としては物足りないが、ダウニーとワトソン役のジュード・ロウのかけあいも絶妙で楽しめたし、エンタメ映画としては及第点が上げられると思う。

 一昔前のロンドンを再現している点も見どころで、曇り空と硬質の建築物が陰鬱な空気を醸し出し、スリルを引きたてる。時代が時代だけにロックは聞けないが、酒場のシーンではTHE DUBLINERSの"THE ROCKY ROAD TO DUBLIN"が流れていてニヤリ。アイリッシュのトラッド・フォークは、この時代にも違和感なく溶け込む。

 ジャケは、この曲を収めたダブリナーズのベスト盤『THE BEST OF DUBLINERS』、1967年リリース。この曲をバックにして拳闘の勝負に挑むダウニーの姿は、ほとんど『ファイト・クラブ』だ。