家へ帰ろう

gakus2011-02-07

 ココで触れておかなきゃと思いつつ、ボヤボヤしているうちに先週末、日本でも公開が始まっていた『ウォール・ストリート』。鬼才オリバー・ストーンによる『ウォール街』、23年ぶりの続編です。

 今回の主人公は、投資銀行に勤務する若きエリート(シャイア・ラブーフ)。ある日突然、勤務先が破綻し、恩師である頭取が自殺し、そのうえ彼自身も財産を失ってしまう。破綻がライバル行の頭取(ジョシュ・ブローリン)の策略によるものであったことを知ったシャイアは、かつてウォール街で名を馳せた投資家で服役を終えたばかりの、前作のカリスマ、ゲッコーに協力を求める。今や投資から手を引いたゲッコーの条件はひとつ。それは、シャイアの婚約者である、不仲だった愛娘(キャリー・マリガン)との関係修復を手伝うということだったが…。

 前作の背景はバブル期だったが、今回はリーマン・ショック以後の大不況。誰もがフツーに潤っていた時代に野心家がひしめいていたのが前作なら、これは誰もが苦しんでいる時代に金を吸い上げる、ごく少数の策士が”悪”となる。当然ゴードンが太刀打ちできる相手でもなくて、金融システムの隙間を突くような奇策は出てこない。そういう点では、前作のサスペンスのノリを期待すると肩透かし。

 しかし、それでも憎めないのは家族のドラマになっているから。ハリウッドお得意の”ファミリーこそすべて”というテーマではあるが、結局のところ、”誰のために稼ぎ、誰のために儲けているのか?”というシンプルな事実から軸がブレないのがいい。昼間にしっかり稼いだら、夜は愛する者が待つ家に帰る。そんな当たり前のことが、なぜかできなくなっしまうものなんだよね。

 前作のエンドクレジットで使われたTALKING HEADS”THERE MUST BE A PLACE"が今回もラストで流れてきてニヤリとさせるが、それ以上に重要なのが元トーキング・ヘッズ、現在はソロで活躍中のDAVID BYRNEのナンバー”HOME”。シニカルではあるが温かみをもって”家”の大切さを歌う名曲。冒頭、シャイアとキャリーが自宅で過ごすシーンで流れたと思ったら、ラスト近くで再び流れ、スコアの中にもこれをアレンジしたフレーズが聞こえてくるほどだから、このナンバーが本作で持つ意味は、とてつもなく大きいに違いない。

 ジャケはデビッド・バーン、”HOME”から始まる2009年リリース、ブライアン・イーノとのコラボ・アルバム『EVERYTHING THAT HAPPENS WILL HAPPEN TODAY』。ちなみにこの映画では、本アルバムから”HOME”以外にも4、5曲がフィーチャーされている。