10代のグレート・エスケープ

gakus2004-10-01

 今日有楽町のビックカメラで思わぬ発見! なんとアンダートーンズ/UNDERTONESのDVDが! ピストルズとかクラッシュとか、その辺のDVDなら採算もとれそうだからわかるけど、よりによってアンダートーンズの国内盤DVDが出ているとは!! ありがとう、BMGファンハウスさん! というわけで、このドキュメンタリーDVD『THE STORY OF THE UNDERTONES』を購入しました。

 9月29日の日記で「ブラディ・サンデー」を取り上げて以来、北アイルランドづいてますが、昨日の日記に記したスティッフ・リトル・フィンガーズが、かの地の急進的パンクバンドなら、1970年代後半その逆を行っていたのがアンダートーンズ/UNDERTONES。パンクであって、パンクではない。

 血の日曜日事件が起きた北アイルランド、デリーの出身でありながら、彼らは反社会的な歌をほとんど演奏せず、むしろフツーのガキのフツーの歌を歌っていた。このDVDに収録されている演奏シーンをみると、Vネックのセーターにジーンズという、本当にどこにでもいそうな若い連中が、ノイジーサウンドを奏でている。パンクス的なアティチュードから掛け離れていることは、ファッションだけとっても明白。

 “現実逃避だった"…ボーカルのフィアガル・シャーキーは、このドキュメンタリーでバンド活動について語っている。“デリーは400年も拘束されてきた街。音楽でそれを変えることは不可能だ"。言うまでもなく、血の日曜日事件が起きたとき、デリーのすべての市民がデモに関わっていたわけではない。争いごとや、街の重たい空気にウンザリし、銃声を聞きながら、ここから出ていきたいと切に願っていた人もいたはずである。アンダートーンズの境遇は、あえてそういう分類をすると後者に属するだろう。シャーキーは“小学校に通学する度に検問を受けていた"と語る。

 さらに他のメンバーからは“女性関係が豊富だったら、歌詞も変わっていただろうなあ"という発言が飛び出す。恋人もいない、オシャレでもない、戦うほどの無茶もできない、逃げだしたい…いわゆるボンクラ君。こういうタイプの思春期って、どこにもあるんだなあ。もしハイティーンの自分が当時のデリーに住んでいたとしたら、デモ行進している姿よりも、こっちのタイプの自分の方にリアリティを感じる。

 ともかく、名曲『TEENAGE KICKS』は、そんなボンクラ的心情から飛び出した。THE WHOの『MY GENERATION』やJAMの『IN THE CITY』に匹敵するティーンエイジ・アンセム。この曲をギターのダミアン・オニールが、20年も世代を隔てた若いバンド、アッシュ/ASHと一緒にプレイするシーンは感動的だった。ドン詰まりから脱したいと思う若い世代の胸の内は普遍的と思わせる場面。

 このドキュメンタリー、当時から才能のある若手バンドを発掘し続け、現在も活動を続けているイギリスのベテランDJ、ジョン・ピールが案内役を務めている。ピールは自分の葬式には『TEENAGE KICKS』を賭けてほしい、と早くも遺言を残しているらしい。この人は良い意味で、現役のティーンエイジャーかも。