忘れちゃいけませんでした
取り上げるタイミングを逸して公開中になってしまった「ハッスル&フロウ」。今年のアカデミー主題歌賞に輝いたナンバーはもちろん、同主演男優賞候補となったテレンス・ハワード(「クラッシュ」)の好演も光る人間ドラマです。
テレンスふんする主人公は元々ヒップホップ・アーティストを目指していたが、今はしがないポン引き暮らし。そんな彼が安物のカシオトーンを入手し、また教会で聞いた美しい歌声に触発され、再び夢を追ってデモテープ作りを始めるが…というお話。夢を追う人間の情熱や、それによって周囲が見えなくなる盲目的弊害がリアルに伝わる作り。妊娠中の娼婦に“私にも感情があるのよ!"と叱られるテレンスの情けなさは、他人事と思えず。
アカデミー主題歌賞受賞の『IT’S HARD OUT HERE FOR A PIMP』が、まさしく主人公が作っているデモの曲で、その完成までの過程がドラマのキーとなるのだが、女性コーラスが入ったり、アレンジが加えられたりして、楽曲がどんどん肉付けされていく過程は、感動的でさえある。ゴダールの「ワン・プラス・ワン」における『悪魔を憐む歌』の創作過程をちょびっと連想した。
この他、ヒップホップ・ナンバが大量に投入されているが、この分野には無知なので、オープニングにフィーチャーされたBUDDY GUY『BABY PLEASE DON’T LEAVE ME』収録の2001年のアルバム『SWEET TEA』のジャケを。1970年代のブラックスプロイテーション映画を彷彿させるスタイリッシュなクレジットに、このヘビーなブルースが重なる、吸引力の強いオープニング。素晴らしい!
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