永遠のモータウン
現在公開中のドキュメンタリー「永遠のモータウン」のお話。
1960年代のポップス界を席巻したデトロイト発のブラック系レコード会社モータウン。シュープリームスやスティービー・ワンダーなどの大スターこそ有名だけれど、彼らのバックで演奏していたミュージシャンについては、一般的には知られていない。ポピュラー・ミュージックに革命的な技巧をもたらしたにも関わらず、だ。本作は、そんな彼ら=通称ファンク・ブラザーズにスポットを当てたもの。今は亡き天才ベーシスト、ジェームズ・ジェマーソンは晩年、モータウン25周年を記念したイベント<モータウン25>にも招待されず、自分でダフ屋からチケットを買って会場に入ったという、泣かせるエピソードも紹介。モータウン・フリークの私には、かなり勉強になりました。
映画の核心的なことについては某雑誌に書いたので、ここではちょっとハズれて、監督ポール・ジャストマンのことを。この名前が気になって調べてみたら、やっぱり!と納得。J.ガイルズ・バンドのリーダー、セス・ジャストマンのお兄さんでした。アメリカン・ロックのなかでも、とりわけブルースやソウルに根ざしたロックンロールを聞かせてくれたJ.ガイルズ・バンドは、解散した今でも個人的に大好きなバンド。ソウルといってもアトランティック系サザンソウルの影響の方が印象的には強いかもしれないが、シュープリームスの『愛はどこへいったの』なんかをカバーしているし、ボーカリス、ピーター・ウルフのソロ・アルバムでも、もろモータウン・サウンドを借用していたりする。セス・ジャストマンもインタビューで、“ファンク・ブラザースのような結束力がバンドには必要だ”と語っていた。
で、ポール・ジャストマン。彼はJ.ガイルズ・バンドの最大のヒット曲『堕ちた天使』等のビデオクリップを撮っているし、ストーンズ1972年のご乱交ツアーを追った発禁ドキュメント「コックサッカー・ブルース」や、ドアーズのライブビデオの編集に携わっている。いうまでもなく、どちらもブルースをルーツに持つバンドだ。またジャストマンは、「永遠のモータウン」以外にも、ニューオリンズの音楽に関するドキュメンタリーを撮っているとのこと。つまり、ブラック・ミュージックへの造詣はかなり深い人なのである。「永遠のモータウン」の持つ温かさは、ジャストマンの“愛”でもあるのだな、と改めて思った次第。
写真は「愛はどこにいったの」収録のJ.ガイルズ・バンド、1976年のライブ・アルバム『BLOW YOUR FACE OUT』。タイトルどおりの、強烈にエネルギッシュな内容です。
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