結合性オスカー俳優がいるか!?
やっと、やっと日本公開されるファレリー兄弟の新作「ふたりにクギづけ」(原題「STUCK ON YOU」)を観る。
生まれてからずっと一緒で、田舎町に自分たちの居場所を築いてきた結合性双子の兄弟。俳優志望の兄ウォルトの夢をかなえるべく、ハリウッドに向かった彼らは、そこである決断を迫られることになる。
結合性双子(ぶっちゃけ、シャム双生児)という題材がデリケートなものであるだけに、日本公開がためらわれたのも納得だが、ファレリー兄弟の作品を観ている方ならわかるとおり、そこに差別的な視線は皆無。これはコメディーだから、もちろん主人公たちも笑いのネタになるけれど、それは他のフツーの人間も同様。特異な部分に尻込みしない、ファレリー兄弟の視点はタテマエ的な差別を問題にする方よりも、ずっとリベラルではないか。だからこそクライマックスでグッと泣けてきてしまうのだと思うが、どうでしょう。
それはともかく、ファレリー兄弟の音楽センスはツボで、「メリーに首ったけ」でジョナサン・リッチマンを語りべに担ぎ出したり、「愛しのローズマリー」でエジソン・ライトハウスで閉めるなど、なかなか味なことをするなあ、といつも思う。で、今回はというと…音楽多すぎ。正確に数えてないからわからないけれど、20〜30曲は使われてたんじゃないだろうか。オープニングのピクシーズ/PIXIES『HERE COMES YOUR MAN』をはじめ、ジミヘンやらギルバート・オサリバンやらストーンズやら新旧ロックがズラリ。
とりわけ、2003年のニューカマー、キングス・オブ・レオン/KINGS OF LEONは特別扱いといってよい。マット・デイモンふんする弟が文通相手にご対面する緊張のシーンでは『MOLLY'S CHAMERS』が、スターとなった双子が出演したCMのバックには『CALIFORNIA WAITING』がガンガン鳴り響く。さらに名曲『HOLY ROLLER NOVOCAINE』は前半だけでなく、エンディング近くでもフィーチャーされていた。キングス・オブ・レオンはナッシュビル出身らしく、泥臭い音を鳴らすロックバンドだが、米国以上に英国での評価が高いだけあって、ギターの音色にパンキッシュなエッジが利いている。これは市井の民としてキャラを描きながらも、風刺や毒気も忘れないファレリー兄弟の作風と、感触が似ていると思う。もちろん、本編でも好相性。
ジャケは2003年リリース、KINGS OF LEONのデビュー・ミニ・アルバム『HOLY ROLLER NOVOCAINE』。上記3曲は、ここでも聴けるし、後にリリースされたフルアルバム『YOUTH & YOUNG MANHOOD』にもすべて収められている。
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