ルーザーのBGM
アカデミー賞有力とみられているアレクサンダー・ペイン監督の「SIDEWAYS」(春公開)は、彼の前作「ハイスクール白書」「アバウト・シュミット」にも通じる人間の情けなさをユーモアと悲哀をもって描いた秀作です。
ワイン・オタクの中年男(ポール・ジャマッティ)が、結婚を控えた親友(トーマス・ヘイデン・チャーチ)を連れて一週間の旅に出発。ジャマッティにはワイナリーを訪ねる旅だったが、女好きのチャーチは独身最後らしく、ハメをはずす気満々。そんな2人の道中を描きつつ、人生なかば過ぎて何も成し遂げていないと考えてしまう中年の不安をリアルに浮かび上がらせる。離婚のショックから立ち直れず、ワインのオタク道を追求することに慰めを見出してるようなジャマッティは、次の恋にも踏み出せず、なかなかのダメ男っぷりを発揮。「アメリカン・スプレンダー」に続くグッドジョブ。
スコアはミドルテンポで、ファンキーなジャズ・テイスト。どこかのどかな雰囲気が妙味。既成曲では、チャーチの忘れたサイフを取り返すために、ジャマッティが忍び込んだ太めの人妻の部屋でガンガンかかっているハードロック(パット・トラヴァース?)がいちばん印象に残った。そこでは屈強な夫が妻とセックスの真っ最中で、いかにもアメリカンなタフガイが好みそうなナンバー。いかにもルーザーなジャマッティのキャラとは対極にある。
ルーザーなキャラにふさわしい(?)ところでは、アメリカン・インディーズの中堅LUNA/ルナあたりか。エンドクレジットによると2曲提供しているらしいが、どこで使われていたのか、判然とせず。1曲(『SLEEPING PILL』)は、チャーチと恋におちる人妻の家でかかっていたが、もうひとつはわかりませんでした。
そのルナ、イギリスのライブ広告記事で“FINAL TUOUR"という文字があり、気になって公式HPを覗いてみたら、どうやら解散する気配。昨年のアルバムがファイナル・リリースとなる模様。ちょっとショックです。
ジャケは『SLEEPING PILL』収録、1994年リリースの2ndアルバム『BEWITCHED』。
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2005/07/07
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