同類発見

gakus2006-04-19

 「メタル ベットバンガーズ・ジャーニー」なるドキュメンタリー映画が6月に劇場公開される。これは“大学に入ったけどメタル学がなかったから人類学を専攻した”とのたまうほどのヘビメタ・ファンにして、御歳30歳の学者サム・ダンがメタル愛をつづったもの。1980年代のヘヴィ・メタルの大ブレイク期に起こった社会のバッシングを見据えつつ、“どうして世間はメタルを嫌うのか?”を探り、LAからイギリス、北欧を旅して人気アーティストの声を集めている。

 個人的にメタルは趣味ではないが、それでもこの映画は面白かった。ロニー・ジェイムス・ディオブラック・サバスのトニー・アイオミによるヘビメタ史の生き証人的なコメント、“俺こそ元祖”と言わんばかりのアリス・クーパーの発言など、インタビュー・フッテージは豊富。なかでも面白かったのは、トゥイステッド・シスターのディー・スナイダーで、検閲機関PMRCに召還されたときのことを、“「ブレイブハート」の主人公のような気持ちだった。数週間かけて、殺傷能力を増した演説原稿を披露してやった”とぶち上げる豪快さ。

 また、モータヘッドのレミーは明らかに酔っ払っていて、マジメに質問に答えるベテラン・アーティストが多いなか、“女は大好きだ。楽屋では素っ裸でいてほしい”と単なるエロオヤジと化している。

 かと思えば、意外にうなずける発言が多かったのがスリップノット。男性優位主義的なヘビメタの傾向について“女性は尊重するが、俺は男だ。男同士でバカをやるのが好きなんだ”と答え、悪魔主義的な傾向が非難の対象になることについては“誰も本気でこの世を地獄にしたいなんて思わないだろ”と切り返す。

 しかし、北欧のブラック・メタルと呼ばれるバンドの方々は本気で悪魔を崇拝しており、教会への宗教テロも敢行しているとか。メタル愛の強いサム・ダンも、さすがにこの国でのアーティストを前にするとビビリ気味。

 とにかく、スリップノットのコメントどおり、アーティストもファンもおバカさんなのがいい。決して見下しているのではなく、好むジャンルは違えども根っこの部分は同じ。ここにも同類がいたかーと嬉しくなった次第です。

 ジャケはMOTORHEAD、1980年リリースの『ACE OF SPADE』。タイトル曲が劇中で聴ける。この映画で使われたナンバー中、数少ない、自分が持ってるレコード。